インドのコルカッタにいた。
ここで、金を稼ぐ方法はないか?資金も要らず、何か身一つで?よし、歌を歌ってみようじゃん!
ワシは自分が歌詞を知っている曲をメモにしてみた。すると・・・童謡と昔のアニメソングばっかやんけ!いかに自分が時代とずれているか再確認した。まあ、いいか、インド人だもん聞くのは。
で、人が多い所のほうがいいから、街で一番大きなニュー・マーケットに行ってみる。DAISOで買った宴会用の大きな蝶ネクタイを付けて、早速、一曲。
「かーらーす、なぜ泣くのー。からすは山にー」
などと歌っていると数分の内に人々が寄ってきた。しかあし!しかし、人々の表情は冷たい。歌い終えたワシは聞いてみた。
「じゃぱにーず・そんぐ。ぐっど?」
目の前にじっと見つめる連中は無表情に首を振った。うーむ。じゃあ2曲目じゃ。
「思いー込んだあらー、試練の道をー」
また人が増えワシを囲む輪が出来てしまった。でも、やっぱり空気は変わらず。
「ぐっど?まにー、ぷりーず!」
ワシは言ったがだれーからも反応なし。冷たい視線が帰ってくるだけ。あーあ。結局、3曲を歌ったが金も貰えず反応も冷たいままだった…。
カルカッタでは冷たい視線攻撃を浴びただけだった歌謡ショー。聖なるガンジス河で有名なバラナシでリベンジをすることにした。
夕方の人々が涼んでいる中、ガートの一つで再びワシは舞台へと上った。
「ぽっぽっぽー、はとっぽっぽおー」
また童謡とアニメ・ソングである。仕方ないじゃろ、それしか知らないんだから。
だが、二度目ということで少し落ち着いていたせいか、今回は少しだけ前よりウケがいい。何曲か歌った後でニコニコ顔のおじさんの一人に近づいてみる。
「ミスター、まねー?」
おじさんは微笑みを絶やさずに財布を出すとコインをワシの掌に置いてくれた。
「さんきゃー・べりー・まっち!」
やったぜ!と思って手を開くと…50セナ。1ルピー(1.5円)の半分である。
幾らインドの物価が安くても何にも買えんがなあ!
しかし、せっかくのおじさんの好意を無には出来ない。内心のガッカリ気分を隠してニコニコしながら立ち去ろうとすると、近くのガキが「50セナで喜んでやがんの、はは」とか言ってるのが聞こえた。
殴ったろか!
*2003年にインドに行った際の体験談です。
(2012年10月21日掲載)
この記事は「ジジイ梅が海外でこんなコト、やっちゃいました。古い話も多々ございますが、宜しいでしょうか?」より転載しております。
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梅本昌男
1963年生まれ。1993年にワーキング・ホリデイ制度を利用してカナダへ。現地の邦字新聞の記者、ベルリッツの日本語教師を 経て、フリー・ライターへ。カナダでの8年の後、2001年より
タイのバンコクへ移動し東南アジア各地を回る。2006年秋より1年ほどエジプトのカイロを拠点にアラブ諸国をぶらり。現在、再びバンコクに滞在中。
記事を掲載して頂いた雑誌…「SKYWARD、AGORA(JAL機内 誌)」「MAGAZINE協賛の子供向け雑誌)」「ジュニア・アエラ」「VIA(エアポ ートリムジン車内誌)」「ポパイ」「ロングステイ(ロングステイ財団会誌)」「日経KIDS+」「日経トレンディ」「日経WOMAN」「等々。
共著の単行本…「アジアのツボ:東南アジア編(スリーエーネットワーク)」「極楽タイの暮らし方(山と渓谷社)」
記事を掲載して頂いた単行本…「地球の歩き方;エジプト2008-2009」「旅の大ピンチ(山海堂)」「地球の暮らし方:カナダ編」「地球の暮らし方:ロングステイ」「JTB海外ロングステイ30都市徹底ガイド」
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