青春の日々をギャグと哀愁で描く:第5回国際漫画賞入賞のタニス・ウィラサクウォンさん
『自分の声にしたがって旅に出る男 (The Man Who Follow His Own Voice)』(Let’s Comic発行)で日本外務省が主催する第5回国際漫画賞の優秀賞を獲得したタニス・ウィラサクウォンさんはまだ大学生。初めての単行本で今回の名誉に輝きました。
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Q:漫画に興味を持ち始めたのは?
「兄や姉の影響で6歳ごろだったと思います。『ゴン』(田中政志の恐竜を主人公にした漫画。セリフは一切ない)がお気に入りでした。まだ字を読むのが難しかったので(笑)。
小学校に入り、漫画好きな子供が皆するように『ドラゴンボール』のキャラクターを落書きしたりしてました。初めて自分のオリジナルの漫画を描いたのは9歳の時です。忍者が主人公のアクション物でした」
Q:本格的に漫画に取り組もうと思ったのはいつ頃ですか?
「高校2年の時、出版社が主催する漫画セミナーに参加しました。プロの漫画家の方々が講師となって、キャラクターの作り方など基礎を教えてくれるものです。その際、自分の書いたプロットの反応が良かったので夢を追ってみることにしました」
Q:デビューのきっかけは何でしたか?
「ブログに自分の作品を発表して、好評価を受け、雑誌社からオファーがあったんです。それらの短編をまとめたのが『自分の声にしたがって旅に出る男』です」
Q:物語のアイディアはどこから?
「自分の日常生活の中で起こった出来事を、発想の元に使いました。国際漫画賞を頂けたのは意外でした。私の漫画のスタイルだとアピールしにくいと思ったので。とても光栄です」
Q:今後の夢は何ですか?
「漫画で暮らしていければ最高ですね。あと自分自身が納得のいく傑作(masterpiece)を描いてみたいです」
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タニスさんと会っての第一印象は、「あ~、この受賞作品を描いた人らしい」でした。日常の出来事を掬い上げて、笑いと哀愁でオブラートする。そんな作業に似つかわしい感じの人でした。
大学ではジャーナリズムを専攻していて、漫画だけでなく、大江健三郎や村上春樹、プラーブダー・ユン、ダグラス・アダムス(『銀河ヒッチハイク・ガイド』)などの作家にも影響を受けているそうです。
個人的には、1970年代の日本や永島慎二の作品のにおいをプンプン感じました。
『自分の声にしたがって旅に出る男』
コメディアンを目指し学校のクリスマス会で大一発ギャグを繰り出そうとする少年、失恋を乗り越えるためピザの大食い大会に挑戦する女性とヘビーメタル・ロッカーの対決、ミュージシャンを目指し恋人と別れた男と元カノとの数年後の再会・・・青春の夢の数々を扱った切なくて笑える佳作集。
『自分の声にしたがって旅に出る男 (The Man Who Follow His Own Voice, ชายผู้ออกเดินทางตามเสียงของตัวเอง )』(Let’s Comic発行)
(2012年8月31日掲載)