2012年10月27日 掲載
今から8年前、東京都の選抜選手として国民体育大会の予選を戦っていた俺は、本戦出場を賭けた大一番で1得点1アシストを記録することが出来た。試合前に不安だった俺に徐ろに「今日はお前の得点で勝つような気がする」とニコニコしながら声を掛けてくれた人物がいる。結果的にはこの言葉が俺にとって魔法となったような気がする。得点後、俺は真っ先にベンチに駆け寄った、魔法を掛けてくれた恩師”愛称:ランドさん(関口潔さん)”の元に…。
その後俺は岡山や北九州を渡り歩きタイへ。引退してタイで働き始めた5月、”ランドさん”から一通のメールが届く。「飛行機の乗換で比較的時間が取れるからバンコクで会わないか!?」久しぶりの再会がまさかタイで実現するとは思わなかった。彼は横浜FC強化部長や北マリアナ諸島代表監督を経て今年からラオスサッカー協会技術委員長に就任したそうだ。1時間ちょっとの再会だったけど、沢山話すことがあり過ぎてあっという間に時が過ぎてしまった。
現在東南アジアではSuzuki Cupという東南アジアチャンピオンを決めるための大会の予選ラウンドがミャンマーで行われている(ちなみにタイ代表は予選免除、11月から行われる本大会からの出場となる)。その忙しい最中に、タイのサッカーを視察に訪れた”ランドさん”、これは当然アテンドさせて貰うでしょう。BEC Tero Sasanaの試合をBTS National Stadium駅から直ぐのThephassadin Stadiumで一緒に観戦しながらラオスのサッカーについて色々とお話を伺った。
ラオスにはプロリーグというものが存在せず、残念ながらサッカーで生活していくという考え自体が無いのだそうだ。そんな中でも何人かの選手がタイリーグ・ディビジョン1や2のコンケーン、クラビー、ノンカーイでプレーしているという。ラオスのリーグは2月から5月で終わってしまい、代表を強化していく環境を整備していくだけでも苦労が絶えないようだ。しかし選手一人ひとりの技術の高さ、可能性は大いに感じているという。
あとはやはり文化のギャップ、タイ人は”出来ない事”も”出来る”と言って最終的に逃げ出してしまう事が多いのだけれど、ラオス人はとにかく”出来ないよ”と言ってやろうとしないそうだ。ラオスの為に思ってやっている事が、なかなか上手く運ばない何とも不甲斐ない思いをしながらも毎日戦い続けているという。
そんな彼から見たタイサッカーはというと…年間を通して外国人選手達とプレー出来、良い環境で戦えていることを改めて羨ましく感じたそうだ。俺にはこの環境でやれているのだから、もっともっと東南アジアを先頭切って引張っていって欲しいし、日本や韓国にもっともっと挑んでいくべきだというメッセージにも感じた。
是非ともラオス代表にはSuzuki Cup予選を勝ち抜いてもらい、本戦でタイ代表と対戦する姿が見たい。そこで”ランドさん”は今度は選手達にどんな魔法を掛けるのであろうか。
伊藤琢矢(いとたく)
アマチュアに拘りプレーを続けた20代。33歳でのプロ契約を期にJリーガーを目指す事に。大宮・岡山・北九州とJリーグ昇格に携わり、自身は36歳でJのピッチに立った。2011年よりタイに活躍の場を移した「夢追人」。
いとたくブログ『夢追人』
Regista in Thailand