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『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』のバズ・プーンピリヤ監督の才能にほれ込んだウォン・カーウァイが製作総指揮。2021年サンダンス映画祭・ワールドシネマドラマティック部門で審査員特別賞した話題作『プアン/友だちと呼ばせて(英題:One For The Road、タイ題:วันสุดท้าย..ก่อนบายเธอ)』が2022年8月5日、日本で公開される。
バズ・プーンピリヤ監督が『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』でも見せている、出演者一人ひとりのキャラクターの濃度には驚かされたが、観客をスクリーンに引きずり込む感情移入を生んでいるのは難しい役に挑んだ主演の2人の功績が大きいだろう。
アイス・ナッタラットに続き、今回は主演の一人、トー・タナポップに独占インタビューを行った。Zoom上でもわかる華やかな笑顔を見た瞬間「あれ?タイで見たことがある」と気づくほど、タイでテレビを見る習慣がある人であれば気付くよく見かける俳優だ。
それなのに、映画を見ている間「こんなに演技の自然な俳優さんがタイにいたんだ」と感心しつつ、彼だとは気付かなかった。それほどに別人に見えたのだ。
考えてみればこれはなかなかすごいこと。
『プアン/友だちと呼ばせて』ではニューヨークでバーを経営するリッチで女好きのタイ人男性を演じ、余命宣告を受けた友、ウード(アイス・ナッタラット)の願いをかなえるためにタイに帰国し、ウードと共にタイを巡ることとなる。
インタビューでは、高校生から30歳前半までをごく自然に演じきったトー・タナポップのプロ根性に触れることができた。また、甘いマスクからは想像できないほど、俳優としての高い目標があることも、ぜひ知ってほしい。
--タイランドハイパーリンクスです。タイ好きな方が読むサイトなので、タイのこともふくめて今日は色々お話を聞かせてください。
ヨロシクオネガイシマス(日本語)。喜んで!
--コロナ前はタイによく行っていたんですけど、今お顔を拝見してびっくりしました。すごく頻繁にタイのテレビで見かけますよね。今顔見て「あれっ?この方、知ってるって」思いました(笑)。
ありがとうございます(笑顔)!
--それなのに『プアン/友だちと呼ばせて』を見ている間、まったく気付かなかったんですよね。別人だと思っていました。
そう思ってくれて凄くうれしいです。この役のために15キロも増量したからかもしれませんが。
--なるほど!それか(笑)!でも増量したほうが、ボスのちょっと空威張りしているようなキャラクターにあっていますね。
やっぱりキャラクターごとに演技は変えたいと思っています。演技のバリエーションをたくさん持っている役者だということも、演じることで見せたいですね。
--最初からボス役でオーディションを受けたのですか?
そうですね。オーディションを受けるときには、僕は誰役っていう目星がついていました。それでも僕とアイスは両方の役をオーディションで演じたんですよね。
役を入れ替えて演技を見せたんですけど、監督にありきたりなオーディションはやめようって言われました。
--ボスの役は高校生から30代前半のシーンがありましたよね。年代の違いを演じるのも、相当大変だと思うのですが…。
ええ、ほんとうに難しかったです(笑)。年齢の幅があって、それを演じ分けるという演技は初めての経験だったんですよ。
撮影が終わってから思い返しても「よくこんな役ができたな」って思いました。
ボス役は年齢や経験によって、キャラクターが違うんですよね。
高校生の時、20代の時、30代前半の時、そして一番最後にもボスはキャラクターが変わるので、4つのキャラクターを演じたと言っても過言ではないと思うんです。
--高校生の制服を着るのはなかなかチャレンジングなことだと思いますが、その辺の葛藤はあるものですか?
あーあ(笑)。実は僕、以前のドラマでも大学生の時に高校の制服を着て演じたりしているので、そこは全く抵抗なかったです。
どちらかというと30代のボスを演じる方が大変でした。メイクでしわを増やしてわざと老けメイクをしてもらっていました。
--アイスさんはウード役のために17キロ落としたのに対し、トーさんはボス役のために体重を15キロ増やしたんですよね。
はい。役作りで体重をコントロールするのは初めての経験でした。でもアイスの減量はとにかく大変で、自分も一緒に頑張りたいなって思って、やり遂げました。
--二人で逆の行動で役作りをしたんですね。
そうです。この映画ではやっぱり対比が大事だなって思います。
もし僕が太ることができたら、痩せている人はもっと痩せて見えるはずなので、アイスの苦労が少し減るんじゃないかな?って思ったんですよね。
--先ほどアイスさんにインタビューして2人とも久しぶりに会った、とのことだったんですけど、撮影中はどんな話をしていたのですか?
撮影中は映画の話はほとんどしませんでした。モデル時代、事務所の先輩・後輩だった時の話とか、人生について話したり、運動の話をしましたね。
昔のことを思い出して色々話しました。
--ボス役を通して、友達の死に寄り添ったわけですが、もし自分も同じように友達の余命が少ないと知らされたらどうすると思いますか?
僕もボスと同じことをすると思います。それが友達だと思います。友達の残りの人生をせいっぱい輝かせるために、何かしたいですね。
--やっぱりボスとトーさんは、似ている部分があるのですかね?
ありました。心の深いところにあるんですけど、人に愛されないんじゃないかと思っているところです。
--えっ?意外です。トーさんは誰からでも愛されそうですが…。
いえいえ。愛されないと思っている自分は、本当にいます。
--ボスと言えばカクテルを作るシーンが印象的でした。バー経営者レベルになるのは苦労したのでは?
凄く一生懸命カクテルの作り方を習いましたね。2~3か月くらい練習したかな?僕は毎回、役で演じる職業の人になりきるために、その職業について学ぶことにしているんです。
--ええっ?この映画だけではなく?
はい。そうです。毎回毎回真剣度が上がってきているかも。どんな役にでもなりきれる役者になりたいので。
--それは凄いことですね。今回カクテル作ってみて、一番おいしくできたカクテル名は?
うーん・・・キモセラピー(抗がん剤の意味がある)かな?
--ああ!映画のラストの方に出てくるお酒ですね?
そうです。カクテルの作り方を習っている時から、アルコールが濃いベースのカクテルの方が、うまく作れるなと思っていました。
--メソッド演技を取り入れた撮影だったようですが、アイスさんはニューヨークのタイ料理屋さんで働いていたように、ニューヨークでカクテルづくりを学んだのでしょうか?
僕はタイのバーで働きました。
--えええ?凄いですね。お客さんがびっくりしそう。
アイスは役作りの準備をする期間があったんですが、僕は同時進行でタイで別の撮影をしていたんですよね。だからアメリカとタイを行き来していて、アイスほど長くアメリカにいる期間がなかったんです。
--同じ期間に、年代別に演じ分けなければいけないボス役と、もう一つの別のキャラクターを演じていたなんて、すごすぎます。
大変でしたけど、ウォン・カーウァイさんとバズ監督のプロジェクトは絶対にやり遂げたいと思っていたので、やり遂げました!
--役作りのために大変な苦労をしたその結果、サンダンス映画祭のワールドシネマドラマティック部門で審査員特別賞を獲得したり、こうして日本での公開が決まったりしているわけですが、この映画が世界的な評価を受けたことに関してはどう思いましたか?
誇らしいし、とても光栄です。この『プアン/友だちと呼ばせて』という映画の一員になれて、僕は本当に幸運だったと思っています。
--今回はタイの各地がとても美しく描かれていますね。トーさんは、どこが好きですか?
んー・・・チェンマイです。
場所がきれいだ、というだけではなく、今回の映画でたくさん思い出ができて、印象に残っていますね。
もちろん『プアン/友だちと呼ばせて』の映画の撮影で使ったロケ地はどこもきれいだったんですが、チェンマイでの撮影で色々なことが起こりすぎて、本当に印象に残っています。
映画で土砂降りのシーンが出てきましたよね?あれば人口の雨なんですが、雨を浴びて、具合が悪くなったり(笑)、一緒に旅をしている車が、アンティークのBMWで、凄く年季が入っているんですよね。エンジンがかからなくなって、スタッフと一緒に車を動かすことになったり(笑)…色々な思い出があって印象に残っています。
--日本人がタイに行くときに、行ってほしい場所もチェンマイ推しですか?
やっぱりチェンマイは古都。タイを訪れる人は絶対に訪れるべき場所だと思うので、おすすめしたいですね!
--日本でもタイのドラマがとても注目を浴びていて、トーさんも2021年、タイフェスティバルのかわりに行われた「タイドラマフェスティバル」で挨拶をしたと思うのですが・・・
(首をかしげて)あれ?
--えっ?覚えていないと・・・(笑)
あっ!あれ?あっ!思い出しました(笑)。やりましたね。
--日本にタイのドラマや俳優さんのファンが増えていることを、どう思いますか?
そうですねー。もちろんうれしいです。タイドラマがまたステップアップしたと感じます。日本の皆さんがタイのドラマを見てくれて、俳優に興味を持ってくれて、応援してくださる。ただ、その応援は末永~く、お願いします(笑)!
--トーさんは日本に来たことはありますか?
もう何度も何度も何度も行きました。僕は日本が大好きです!
1か所だけ、凄く好きなんですけど、まだ行けていない場所があるんですよねー。
えーっと…なんていう場所でしたかね。
真っ赤な顔のサルが温泉に入っているところ。
--長野県の地獄谷野猿公苑ですね。
そこに行きたいです!
東京で休暇を過ごすなら表参道。自然を感じに行く場合は、スキーもしたいからニセコに行きたいですね。
--最後に、日本のファンの皆さんに愛情たっぷりのメッセージをいただければ!
『プアン/友だちと呼ばせて』の映画の応援、どうぞよろしくおねがいします!
見たら絶対に満足すると思うし、色々な視点から多くの感想が生まれて、感動を持って帰宅できるはずです。
それと、映画と出演している役者の応援をよろしくお願いします!
--コップンカ―!
アリガトウゴザイマシタ(日本語で)
[記事・取材 吉田彩緒莉]
<STORY>
NYでバーを経営するボスのもとに、タイで暮らすウードから数年ぶりに電話が入る。白血病で余命宣告を受けたので、最期の頼みを聞いてほしいというのだ。タイに駆けつけたボスが頼まれたのは、元恋人たちを訪ねる旅の運転手。カーステレオから流れる思い出の曲が、二人がまだ親友だった頃の記憶を呼びさます。忘れられなかった恋への心残りに決着をつけたウードを、ボスがオリジナルカクテルで祝い、旅を仕上げるはずだった。だが、ウードがボスの過去も未来も書き換える〈ある秘密〉を打ち明ける──。
One for the Road วันสุดท้าย..ก่อนบายเธอ
[監督]
バズ・プーンピリヤ『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』
[製作総指揮]
ウォン・カーウァイ『花様年華』『恋する惑星』
[脚本]
バズ・プーンピリヤ、ノタポン・ブンプラコープ、ブァンソイ・アックソーンサワーン
[出演]
トー・タナポップ アイス・ナッタラット プローイ・ホーワン ヌン・シラパン ヴィオーレット・ウォーティア/オークベープ・チュティモン
タイ/2021年/カラー/シネスコ/5.1chデジタル/129分/字幕翻訳:アンゼたかし/監修:高杉美和
©2021 Jet Tone Contents Inc. All Rights Reserved.
配給:ギャガ
HP:gaga.ne.jp/puan Twitter:@puan_movie facebook:facebook.com/gagajapan LINE:gagamovie
8月5日(金)新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、渋谷シネクイントほか全国順次公開
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