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在日タイ人の皆さんがどよめいた、今タイで最も人気・実力ともにトップクラスのシンガー、ノン・タノン(Nont Tanont)の日本初コンサート。
その記念すべきステージは「こんなに贅沢な時間を過ごさせてもらっていいの?」と思ってしまうほど濃厚な時間となった。
2022年リリースの『โต๊ะริม(melt)』はYouTubeで1億2000万回以上再生され、2023年藤井風がバンコク公演でカヴァー。2024年リリースの『จำนน (White Flag)』も、大ヒット中という、正に「最旬」のアーティストだけに、会場となった新都市ホールには、タイ人と日本人がバランスよく来場。最大1000人キャパの会場はほぼ満席だった。
深紅に花のモチーフをあしらったジャケットをさりげなく着こなし、満面の笑顔で現れたノン・タノン。
圧倒されたのはその声!タイには歌唱力のレベルが高いシンガーもいるものの、彼の場合、歌唱力だけではない。その「声」の魅力が常識を超えてくる。
豊潤な赤ワインのような、濃厚なチョコレートのような、耳を通して心が満たされる艶やかな声は、一度聴いたら虜になってしまうはずだ。本格的なR&Bから、シティポップまで、まるで呼吸するかのように自然に歌いこなす彼の姿に思わず見惚れてしまう。
しかし、ずば抜けたフレンドリーなトークはさすがはタイ人。
「歌エル人ハ歌ッテネ、歌エナイ人ハ頑張ッテネ!」と、たどたどしい日本語で、場内を沸かせ、同じく日本語のMCでは「こんな発表会のようなコンサートは初めて」と、ちょっと戸惑いを見せるような場面もあった。しかし、言葉とは裏腹に全く動じない伸びやかなステージを見せてくれた。
タイランドハイパーリンクスでは、2024年6月22日、記念すべき初の日本でのコンサートを終えたばかりのノン・タノンにインタビュー。
2024年6月1日、2日に行われ話題となった「THE KINGDOMS CONCERT」についても語っていただいた。
ーー今日のライブ、素晴らしかったです。こんなに贅沢な、耳が幸せになる声のシンガーってそうはいませんよね。歌唱力はもちろんなんですが、本当に声が素晴らしい。感動しました。バンドの皆さんの演奏も、レベルがけた外れで贅沢な時間を過ごせました。まずはお礼を言わせてください。ありがとうございます。
ノン・タノン:おお!ありがとうございます。とっても嬉しいです!本当に凄く嬉しいな。実は日本の観客の皆さんが、あんなに良い反応してくれるなんて、思ってもいなかったんですよ。
ーーMCでも言っていましたけど、発表会みたいな雰囲気(椅子のあるコンサートホールでお客さんが座ったまま見ている)で歌うのは初めてだと…。
ノン・タノン:そうですねー(笑)。
ーーやっぱりスタンディングだったり、それなりにみんながのれるような空間の方が好きですか?
ノン・タノン:ううん、そんなことないです。それぞれの国の文化や人の個性を尊重しているので、それが日本の音楽に向き合うスタイルなんだろうなって思います。
ーーなんかちょっとわかる気がして。ノン・タノンさんの曲はR&Bで、日本で聴くとしたら大人が凄くいい空間でお洒落して、声や音楽をじっくり楽しむジャンルなんですよね。
ノン・タノン:理解してます。日本人が安心して僕の音楽を聴いてくれる環境で楽しんでくれたこと自体が、凄いことだと思います。
ーー海外でも数多くの公演を行っていますね。一番タイと違うなあ、と思った国はどこですか?
ノン・タノン:タイと比較すると一番差が激しいのが日本です(笑)
ーー(笑)…あららら。
ノン・タノン:でもいい意味でですよ。僕のコンサートって観客の雰囲気で変わるんです。だから全ての国が、全て違うと思っています。
日本はコンサートにはきちんとルールがありますよね。音量の制限もある。それから日本人はかわいくて、シャイだったりする。日本の国民性とか、ルールの中で、目いっぱい僕のライブを楽しんでくれているのが分かったから、凄く嬉しいんです。
ーー日本人もロックバンドのライブは凄いですよ。日本はジャンルによって、コンサート会場の雰囲気や来場者が全く変わるので、今日はちょっとフォーマルな雰囲気だったのかもしれないですね。
ノン・タノン:そうそう(笑)。そんなふうにフォーマルな雰囲気に捉えてもらっている感じを受けました。逆に質問しますけど、僕のステージ、どうでした?
ーーこれはあくまで私の感想なんですけど、つい最近タイに行っていた時もノン・タノンさんの曲ってコンビニでも、パブでも流れていて、タイでの人気はわかっていたし、
でも、
正直に言うと、わーっと、みんなで盛り上がるのではなく、あまりにもいい声なので凄く良いヘッドフォンで大音量で一人で聴いていたい感じでした。
ノン・タノン:アリガトウゴザイマス(日本語)!
ーー例えば『โต๊ะริม(melt)』っていう曲は、タイトル通り、もう耳の中で溶けちゃいそうな、なんていうんだろう、美味しそうな声なんですよね。
ノン・タノン:おおー(笑)!
ーーどうやったらそんなに素晴らしい声をキープできるんですか?例えば特別なケアをしているとか?
ノン・タノン:特に声のケアはしていないんですよね。毎日、人生を楽しめてますし、正直に言うと、自分の健康なんてあまり気にしていないです。でも一番大切にしていることは、初めて作品に出会って、歌詞や曲を知り、レコーディングする時の気持ちを歌うたびに継続し続けることですね。特に歌詞を尊重したい。その曲を初めてレコーディングする時って、一番その曲に感情移入するから、その感情をコンサートで継続できるようにしています。
ーーここ最近のタイではトップクラスの実力と人気のあるシンガーだと思うんですけど…。
ノン・タノン:そんなことはないですよ(笑)。
ーーなぜ、こんなに多くの方に受け入れられていると思いますか?
ノン・タノン:うーん、知らないです(笑)。
知らないし、知ろうとは思わないですね。今まで、自分らしく働いてきただけ。ただ凄くラッキーな人間だったんだと感じています。
僕はとにかく良い作品を作りたい。そしてその作品を好きになってもらいたい。ただそれだけだし、一番大事なことだと思っています。
この世界に入って思うことは、僕は重要な人間ではないんですよ。
僕の歌を通して、多くの人に作品を聴いて知ってもらう。僕の役目は良い作品を多くの人に届けることなんです。
ーーアーティストの中には「自分が偉い」って思ってしまう人もいますけど、全然違う考え方ですね。作品ありきの自分なんですね。
ーープーケット出身なんですよね?
ノン・タノン:そうです。
ーー日本ではR&Bって、時々若い天才的なアーティストが出てきて人気が出るんですけど、それ以外はおしゃれな大人が聴いている印象です。ノン・タノンさんはプーケットで、子どもの頃からR&Bを聴いて育っていたんでしょうか?
ノン・タノン:タイも日本と同じで、僕が子どもの頃はR&Bのアーティストを同じ世代の友達は聴いていなかったですよ。あの頃はみんなバンド系で盛り上がっていました。
僕の実家はCDレンタル屋さんに近かったんです。小さなころからそこでCDを借りて聴いて歌っていました。色々なアーティストを聴きましたけど、それが「R&B」というジャンルだとは全く知らなくて、ずっとポップスだと思って聴いていたんです(笑)。
ーーそうだったんですか(笑)。
ノン・タノン:大人になってから「ああ、このジャンルはR&Bっていうジャンルなんだ!」って初めて知ったんですけど、自分的にはもう、R&Bの歌い方に慣れてしまっていたっていうのがあります。
ーー特にどんなアーティストが好きでしたか?
ノン・タノン:日本のR&Bも聴いています。ずーっと聞いているのはこのアーティスト(スマホを見せてくれる)。DOUBLE(ダブル)さんですね。
ーーDOUBLEは昔姉妹で活動していたんですけど、妹さんがだいぶ前に亡くなって…。
ノン・タノン:えー?そうだったんですか?
ーーソロプロジェクトなんですけどそのまま「DOUBLE」という名前で活動されているんですよね。
ノン・タノン:あとは、宇多田ヒカルさんのアルバム「First Love」もよく聴いています。
ーーさっき、ライブを見ながら、日本で若いR&Bアーティストが出てきて「うわあ、かっこいい!」と思った時の衝撃度って、宇多田ヒカルさんみたいな存在なのかなって考えていました。ノン・タノンさんはタイで、そういうアーティストなのかなー?なんて思っていて。
ノン・タノン:おおっ、嬉しい(笑)。日本のR&Bアーティストも含め、たくさんのアーティストの曲を聴いて、歌って、今の自分があると思っています。
ーーInstagramを見ていたら、結構日本には旅行で来ているんですね。
ノン・タノン:そうそう(笑)。日本が大好きなので、1年に1回は来ています。年始が多いかな。
ーー日本のどこの県が気に入りましたか?
ノン・タノン:奈良かな。鹿をぼーっと見ているのが大好き(笑)。
ーー奈良の鹿はかわいいですよね。
ノン・タノン:鹿って野菜を食べないんでしょう?みんなが野菜をあげすぎて、食べなくなったって聞いたんだけど本当?それで鹿せんべいを食べているのが不思議で、面白くて、ずっと見ているのが好きです(笑)。
ーーそう言えば奈良の鹿って、芝か鹿せんべいを食べているイメージしかないです(笑)。今回はどれくらい日本にいられそうですか?
ノン・タノン:今回はライブがあるから、すぐ帰らないといけないんです(笑)。
ーー大忙しですね!
ノン・タノン:今年の1月に日本に来たばかりで、京都に行ったんですよ。その時、大きな地震が来て(令和6年能登半島地震)、ニュースを見ました。今回ほど日本の色々な側面を知ることができた旅は初めてでしたね。
ーータイはほとんど地震がない国なので、恐かったでしょう?
ノン・タノン:そう。僕にとっては生まれて初めての大きな地震で、本当に驚きました。
ーー毎年一度は日本に来るなら、もうかなり詳しいでしょうね。
ノン・タノン:とにかく日本に来すぎていて、記憶が薄れるくらい(笑)日本の色々な場所に行ってるんですけど、最近は苗場プリンスホテルでスキーもしました。でも、僕はスキーと相性が悪いなあ(爆笑)。
ーーえ?そんなにウケるほど?
ノン・タノン:転びまくって、日本のスキーヤーの皆さんに助けてもらってばかりいました(笑)。リフトで上まで行けたのはいいけど…。
ーーそんな状態でどうやって下って来たんですか(笑)?
ノン・タノン:そーっと、そーっと少しずつ、すっ転びながら。
ーーステージではかっこいいノン・タノンさんなのに、スキー場ではめっちゃくちゃかっこ悪い(笑)。
ノン・タノン:…(爆笑)それでも楽しかったですけどね。
ーーノン・タノンさんと言えば、2024年6月1日、2日に行われた、タイの男性アーティストの中で、今最も人気のある4人(ノン・タノン、ブライト・ワチラウィット、The TOYS、ジェフ・サトゥール)のコンサート「THE KINGDOMS CONCERT」が日本でも有料配信されたことでも話題になりました。
実はタイフェスティバル東京2024年で、キングの中のひとり、The TOYSさんにインタビューをしたんですけど…。
ノン・タノン:えっ?そうなんだ!
ーーはい。ただその頃は丁度「THE KINGDOMS CONCERT」について、まだ情報開示をしてはいけない時期も重なっていて「まだナイショです」っていう部分が多かったんです。
日本でも配信を見た人や、SNSで流れてくる動画で詳しくその時のことを知りたい、という人が多いと思うので、終わった今こそ、ノン・タノンさんに、お答えいただきたく!
ノン・タノン:(笑)…。わかりました!
ーーあのプロジェクトはどのように始まったものだったんですか?
ノン・タノン:「THE KINGDOMS CONCERT」は、いくつかのエンターテイメント企業が一緒に組んで運営した大きなプロジェクトです。 僕はLOVEiSというオフィスに所属しているんですけど、LOVEiSはその中の1社なんですよ。
みんなそれぞれ応援しているアーティストがいる訳ですけど、ファンの人たちにとっての「キング」を4人集めた大きなコンサートを開催しようと計画されたものが「THE KINGDOMS CONCERT」ですね。
ーー所属しているオフィスも運営に携わっていたとはいえ、タイでトップクラスの人気を誇る4人のキングのうちの一人に選ばれたわけですよね。やっぱりうれしかったんじゃないですか?
ノン・タノン:そうですね。このメンバーに選ばれたこと自体、本当にうれしかったです。でも、緊張とプレッシャーも凄かった。
ーー配信を見ていたんですけど、堂々としていたので、ノン・タノンさんがまさかそんなプレッシャーを抱えていたとは…。
ノン・タノン:4人のキングに一番最初に選ばれたのは僕だったんですよね(笑)。
ーーえ?そうだったんですか。もう、ノン・タノンさんあっての「THE KINGDOMS CONCERT」だったというか、キング・オブ・キングだったんですね。
ノン・タノン:僕は4人の中で業界歴が一番長いんですよ。16歳の時にデビューをして、12年間この業界にいるっていうのがあって、一番最初に決まったんだと思うんですけどね(笑)。
これまで数えきれないくらい、何度もコンサートやイベントには出演してきたんですけど、割と年上のベテランのアーティストと一緒に出演することが多かったんですよ。それはそれですごく頑張らないといけないと思ってやってきたんですけど、「THE KINGDOMS CONCERT」は、全員同世代で、友達感覚。
最初は一人で緊張していたんですけど、徐々に友達が加わってきて楽しみになっていきました。
ーー確かに少年時代から業界にいると、先輩とのステージが多いでしょうね。ジャンル的にも比較的落ち着いたジャンルだから、当時は若い世代の同ジャンルのアーティストがいなかったように思います。
ノン・タノン:そう。今回は同世代のメンバーが集まったものの、まだライブ経験が浅い人もいて、結局デビューしてから一番長く、ステージの経験を積んでいたのは僕だったんですよね。しかも全員、めちゃくちゃ緊張していて…(笑)。
ーー全員タイのスーパースターなのに、かわいいですね(笑)。
ノン・タノン:そんな状態だったから、今回は自分のパートを頑張るだけではなく、みんなを引っ張ってサポートするのが僕の役割だなって感じていました。結果的にそれがメンバーの助けになって、良かったと思っています。
ーーキングのうちの一人にインタビューしたから、気になっていたので配信で見たんですけど、ノン・タノンさんの歌やThe TOYSさん、ブライトさん、ジェフさんの歌や演奏がどうだこうだの前に、ノン・タノンさんのアニキ度が凄すぎて(笑)。ずっと一番年上だと思って見ていたんですよ(笑)。MCも誰よりもパートが長いし、司会者的かな?と思うほど印象に残っていました。
ノン・タノン:…(笑)努力しました。
みんな一人ひとり、担当のセリフがあったんですけど、他のメンバー分の台本まで把握して、全員を助けて引っ張っていきましたね。
自分のセリフを全く言えていない人がいたら、その人が話せるように振ってみたり、それでも言えてなかったら代わりに言うし(笑)、逆にしゃべりすぎている人がいても、それはそれで乗っかるし(笑)、調整しました。
ーーそれはもう出演アーティストじゃなくて、ディレクターです(笑)。
ノン・タノン:…(爆笑)。
でも、やっぱり全員友達だし、親近感があるし、いい経験になったなあって思っています。デビューして10年間は先輩に囲まれて、そんな思いをすることはなく、逆に助けられていたと思うんです。でも今後はこういった経験も増えていくのかなと。
「THE KINGDOMS CONCERT」でこんな経験ができて良かった。勉強になったし、この4人のメンバーで初めてコンサートができて良かったなあって思っています。
ーーこの4人で、またコンサートや何かのプロジェクトをすることはあるんですか?
ノン・タノン:通常は全員個人で活動しているけど、今回、この4人で初めてコンサートができたことで、継続しないとは言い切れないです。まあ、僕はいつでも準備ができていますよ(笑)!
ーー実は、どうしても聞いておきたいことがありまして。ノン・タノンというお名前についてなんですけど、日本の「平仮名」で書くと「のんたのん」という非常に丸い雰囲気になるし、響きがとてもかわいいんですよ。
だから日本人は「のんたのん」っていう名前だと知ったら「かわいい!」という印象の人が圧倒的に多いと思います。
ノン・タノン:ほんと(笑)?
ーーもう一つ理由があります。日本には「ノンタン」(偕成社の絵本のキャラクター。「ノンタンと一緒」というアニメでもお馴染み)という人気キャラクターがいて、「ノンタノン」に似ているっていうのもあるかなーと。
ノン・タノン:あー、名前の音が似ているんだ(笑)?
ーーこちらをご覧ください。(下の紙を見せる)
日本の「ノンタン」です Nont tan ญี่ปุ่น のんたん↑ タイの「ノンタノン」です Nont Tanont ประเทศไทย |
ノン・タノン:…(爆笑)
一同:…(爆笑)
ノン・タノン:あはははは(爆笑)。なにこれ!ちょー、カワイイね(日本語)!これ、写真に撮らせてもらってもいいですか?※大変喜んで、スマホで撮影していました。
ーーどうぞ、どうぞ(笑)!そんなに喜んでただけるとは嬉しいです。
日本では響きもかわいい印象のある名前の「のんたのん」さんなんですけど、本当はどういう意味を持つ名前なのか、とても気になりまして。
ノン・タノン:タイ人の名前は長いからチューレンなんだけど、両親はシンプルな名前が良いと思っていたみたいです。あまり変わった名前だと、大人になった時、盛りすぎてていじめられそうじゃないですか(笑)。
ーータイにもキラキラネームみたいなものがあるんですね(笑)。
ノン・タノン:「ノン」は男の子っていう意味。「タノン」がついて「お金で幸せにする男の子」って意味です
ーー想像以上に現実的な名前でびっくりしました。
ノン・タノン:今までは「タノン」という言葉を組み合わせて名前を付ける人は少なかったんです。「タナチョーク」「タナワット」ならよく見かけますけどね。
でも最近、やっと辞書に「ノン・タノン」の意味を記載するようになりました。そのこともあって、最近の若い子たちが名前に「タノン」を使うことが増えたんですよ。この現象は嬉しいですね。
ーー最後に日本のファンの皆さんにメッセージをお願いします。
ノン・タノン:今回は日本でコンサートができて幸せでした。本当に特別な日になりました。僕は日本が大好きで、1年に1回は遊びに来ています。
SNSをチェックしていると、日本語のメッセージがあるんですよね。今回コンサートを終えた後に、コメントをたくさんいただいて、幸せな気持ちでいっぱいになりました。
やっぱりまた日本でコンサートをしたいなぁ。
その時はまた、かわいらしく見ていただきたいし、お互いに緊張しながら(笑)、コンサートを楽しめたらいいなあって思っています。
ーーありがとうございました!
これまでインタビューした方の中にも、ノン・タノンという人の人柄をほめる人がいたりと、人格者であることは伝え聞いていた。しかし、あまりにもレベルの高いコンサートを見たことで、少し緊張。これだけ実力のあるアーティストだ。取材にも厳しい態度で臨むのではないかと思ったからだ。しかし、それは良い意味で裏切られた。
ライブ後の疲れは一切見せず、音楽の話も、日本の話も、コンサートの話も、熱意を持って話しつつも笑わせてくれる、そして笑ってくれる。プロフェッショナルに徹し、最高のステージで魅せてくれるにもかかわらず決して奢り高ぶらない。
そこには想像以上に暖かく、優しく、面倒見のいい青年がいた。
また、インタビューを終えて「なるほどな」と感じたのは、「贅沢だ」「上質だ」と思った濃厚なステージはノン・タノンというアーティストと共に、楽曲を具現化させるバンドのレベルの高さも大きく関係している。
彼の言う「自分の存在は、良い作品を多くの人に知ってもらうこと」が、彼の使命だとすれば、彼は歌と声、表現者としての担当となり、同じレベルのミュージシャンが必要になってくる。彼の心がけていること、そして思いのすべてが作品を表現する場を一層、上質なものに仕上げているのだ。
タイではこんなにも贅沢なライブを、とても気軽に楽しめる機会が多い。もしタイで彼のコンサートを見る機会があるのなら、この日来ていたタイ人の皆さんと同じようにノリノリで、そしてコールにも参加してみたい。
ただ、あくまでも自分の希望でしかないが、できればいつか、ブルーノート東京のような大人の空間で、いつもより良いお酒を嗜みながら、ノン・タノンのつくり上げる世界をじっくりと味わうように堪能してみたい。
どちらの側面でも楽しめる世界観は、確かな実力があってこそだろう。
取材・文:吉田彩緒莉(Saori Yoshida/Interview・text)
通訳:Panisa Chaikaewmay
写真について:今回のインタビューはNont Tanontさん側からの要望で画像提供を受けて制作しています。
ノン=タノン チャムローン
(Nont-Tanont Chumroen,นนท์-ธนนท์ จำเริญ)
1996年3月4日 プーケット生まれ
https://www.facebook.com/NONTTANONT
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