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第29回 モーラム楽団のススメ:タイ音楽の魅力が120%詰まった極上エンタテインメント

2016年12月10日 配信

第29回 モーラム楽団のススメ:タイ音楽の魅力が120%詰まった極上エンタテインメント

インターネットの発達で、タイ音楽の情報も以前と比べると、かなり得やすくなりました。

筆者がタイ音楽に興味を持ち始めた25年ほど前の頃は、紙媒体で情報を得るしかなく、その頃から比べるとタイムラグもほぼない状態にまでなり、格段に身近になったように思います。

また、タイフェスティバルをはじめとしたイベントなどで沢山のタイの歌手が日本へ行くようになり、日本に居ながらにして本物のタイの音楽を楽しめるという、ファンにとっては願ってもない状況になりました。

しかし、まだ現地でしか観られないものというのもあります。それが今回取り上げるモーラム楽団です。

モーラム楽団は300~500人くらいの大所帯で動き、舞台セットも大掛かりなので、海を越えて日本でこれが見られるというのは、この先もなさそうです。

このジャンルについては、今までブログ以外では日本語で書かれた事がなかったので、初めて知る方も多いと思います。

なので、今回はモーラム楽団とはどんな物なのか、基本的な事を簡単に紹介しようと思います。

 

1.モーラム楽団って何?

◆舞台の外観:シラピン・プータイ(2016年12月4日、バンプリー)
◆舞台の外観:シラピン・プータイ(2016年12月4日、バンプリー)

まず「モーラム楽団」とは、文字通りモーラムを演奏するイサーンの楽団の総称ですが、単にモーラムだけをやるだけでなく、ルークトゥンやお笑い、演劇など様々な要素が取り入れられている、総合的なエンタテインメントと言えます。

元々はモーラムをメインにしていたと考えられますが、発展の過程で観客を楽しませる為に洗練されていった結果、今のような何でもあり的なスタイルになっていったのだと思います。

なので、正確には「ルークトゥン・モーラム楽団」と呼ぶべきなのですが、ルーツがモーラムにあるという事で世間ではこう呼ばれています。タイ人はもっと簡単に「モーラム」と呼ぶ事が多いです。

ステージは大きくセットも大掛かりで、歌手やダンサー・バンドメンバーなどを含めると、舞台には200~300人が上がります。

歌われるのは最新のヒット曲から、伝統的モーラムまで幅広く、お笑いや演劇もありますが、盛り上がるのはやはりダンサブルな曲のメドレー部分です。タイ人はこれを楽しみに来ているといってよいでしょう。

豪華な衣装も見応えがあり、まさにタイ音楽の魅力が120%楽しめる、最高のエンタテインメントです。

 

2.モーラム楽団の基本スタイル

◆モーラム楽団のダンサー達◆モーラム楽団のダンサー達

最初にお断りしておくと、モーラム楽団の本場はイサーンですが、筆者はまだイサーンでのモーラム楽団の体験はした事がありません。なので、ここではバンコクで観たモーラム楽団について触れることにします。

モーラム楽団のコンサートは通常19~20時頃から始まり、24時前後まで行われます(イサーンでは今でも夜通し行われ、明け方までつづけられるようです)。

活動時期はタイの乾期と暑期である10月~5月頃までで、雨期の間は基本的に活動しません。

ただし、人気のある楽団は雨期でも「ミニ」と称して、簡素なステージセットでアルバイト的なコンサートを行う事があります。

衣装はタイの伝統スタイルを基本としていますので、外国人の我々にとってはそれだけでも充分楽しめる要素になっています。

さらに、ダンサーが常時30~50人(規模の大きい楽団はそれ以上)ステージに上がって踊っていますので、圧巻です。

入場料は140バーツ前後の所が多いです(2016年12月現在)。

 

3.モーラム楽団の楽しみ方

◆モーラム楽団の人気歌手達◆モーラム楽団の人気歌手達

これはもう観る人それぞれで、じっくり観るも良し、飲み食いしながらのんびり観るのも良し、あるいはここぞとばかりに踊りまくって弾けるも良しです。

モーラム楽団のコンサートは聴かせるパートからダンサブルなパート、お笑いのパート(これはバンドの休憩の意味も兼ねています)など、非常にヴァリエーションに富んでいます。

また、コンサートという言い方を使うと、日本の人たちは前売券を買って席を確保し、開始は定刻通りで2時間程度で終わるものと想像しがちですが、モーラム楽団の場合は全然違い、もちろん前売券なんてものはありませんし、席も自由です。

絶対に開始時間に間に合わなければ入れないという事もありませんので、来たい時に来て、帰りたい時に帰るという、とてもゆるいものです。

 

4.主要4大モーラム楽団

モーラム楽団は沢山あります。どれくらいという具体的な数字は分かりませんが、イサーンだけで活動している楽団などを含めるとそこそこの数になるでしょう。

その中から、今を代表する4つの楽団を簡単に紹介しておきます。

【1】プラトム・バントゥンシン(ประถมบันเทิงศิลป์)

プラトム・バントゥンシン(ประถมบันเทิงศิลป์)

「モーラムNo.1」とも言われる、2017年で創立60年目を迎える人気楽団。主宰はサンティ・ブントム師。

個性豊かな歌手が揃っていて、オリジナル曲も沢山あるという点でも、他の楽団とは一線を画しています。

拠点はコンケーン

【2】シラピン・プータイ(ศิลปินภูไท)

シラピン・プータイ(ศิลปินภูไท)

こちらもプラトム・バントゥンシンに負けず劣らずの人気を誇る楽団。主宰はウィーラポン・ウォンシン師。

楽団名「山の芸術家」の通り、山岳民族の衣装が特徴的です。

ビジュアル的にも非常に芸術性の高いステージで、音楽のクオリティも素晴らしく、間違いなくタイの代表するモーラム楽団の一つと言えます。

拠点はカーラシン。

【3】ラッタナシン・インタータイラート(รัตนศิลป์ อินตาไทยราษฎร์)

ラッタナシン・インタータイラート(รัตนศิลป์ อินตาไทยราษฎร์)

ラッタナシン・インタータイラートはコンケーンを拠点に置き、楽団員数約300名を有しています。

音楽だけでなく、お笑いからフリークスまで、タイらしさ満載の幅広いヴァラエティーのある舞台構成で観る者を楽しませてくれます。

【4】ラビアップ・ワータシン(ระเบิยบวาทะศิลป์)

ラビアップ・ワータシン(ระเบิยบวาทะศิลป์)

独特のセンスを持ち、熱心なファンも抱えるラビアップ・ワータシン。

最新の流行だけでなく、モーラムの歴史もしっかり踏まえたコンサートプログラムは、言葉の分からない我々外国人でも充分楽しめる内容になっています。

独特のセンスを持ち、熱心なファンも抱えるラビアップ・ワータシン。

最新の流行だけでなく、モーラムの歴史もしっかり踏まえたコンサートプログラムは、言葉の分からない我々外国人でも充分楽しめる内容になっています。

 

この4つの楽団の他にも、カムプン・ルアムミット、モーラム・ヂャイ・グーンローイ、ヌーパーン・ウィセートシン、サーオ・ノーイ・ペット・バーンペーン、ロームガオ・ルークイサーン、歌手をメインにしている楽団ではソムヂット・ボートーン、エーム・アパサラー、ドゥアンペン・アムヌアイポン、などが主なモーラム楽団です。

 

5.情報の入手方法

◆街中に置かれるモーラム・コンサートの看板◆街中に置かれるモーラム・コンサートの看板

これがモーラム楽団を楽しむ上で一番の難関なのですが、コンサートが何時どこで行われるかの情報の入手の方法です。

これについては、今でも分かりやすく情報を発信しているサイトなどは無い状態です。

では、筆者はどうやって情報を探しているのかというと、やはりSNSが中心となります。

タイには「イサーン・ガイド」をはじめ、「イサーン100%」、「イサーン・シン」、「ルークイサーン・ファンラム」など、モーラムのファングループがいくつかあって、そこで皆が情報を共有し合っています。

ただし、アップされる告知や画像は基本タイ文字表記のみですので、タイ文字が読めないと、なかなか情報を拾うことが難しくなってきます。

また、コンサート開催日の近くになると、会場周辺に看板が設置されます。しかし、ソイの奥深くだったりすると、発見するのがなかなか困難です。バンコクの中心部では見かけることはほぼ出来ません。

Facebookでは筆者が開設した「ルークトゥンモーラム・ファンクラブ」というページでバンコク周辺のコンサート情報を随時アップしていますので、ご興味のある方はこちらもご覧いただければと思います。

ルークトゥンモーラム・ファンクラブ(ลูกทุ่งหมอลำแฟนคลับ)
https://www.facebook.com/lukthungmolamforjapan/

 

6.観覧時の注意点

◆モーラム楽団コンサートの会場風景
◆モーラム楽団コンサートの会場風景

モーラム楽団のコンサートには沢山の観客が集まります。

中には酔っ払っている人も多く、そうなるとちょっとした事でケンカが起こることがあります(すべてのケンカの原因が酔っている人とは限りませんが)。

タイのケンカは当事者でなくても危険なので、近くで起こったらすぐに逃げましょう。間違っても野次馬根性で、近くで見ようなどと思わないでください。

また、財布などの身の回りの貴重品にも気をつけておく必要があります。過度に注意する必要はありませんが、最低限の危機管理は必要です。

以上が「モーラム楽団」という、タイ特有の芸能の紹介でした。

正直な事を言うと、このジャンルは日本人には非常に分かりにくいものだと思います。それが、これまで日本語で一切紹介されていなかった大きな要因でしょう。

というのも、この「モーラム楽団」というジャンルは、日本の音楽環境で作られたセンスではすぐに理解できないからです。筆者も理解するまでには結構時間がかかりました。

有名な歌手がいる楽団というのは少なく、ほとんどが名前も知らない歌手達で、オリジナル曲を歌うことも少ないので、何を取っ掛かりに楽しめば良いのか、というのが見つけ難いのです。

ただ、情報というのは後から分かっても充分間に合います。

要は全身で音と雰囲気を感じること。言葉が分からなくても、楽しさが分かればそれで充分です。

そして、観光コースでは分からない、「本当のタイ」がここにあります。

kapiraja
タイ音楽好きが高じて、現在現地調査中。ブログでも情報を発信しております。
「ルークトゥンモーラム・ファンクラブ」 http://luktungmolamfanclub.blogspot.com/
ゆくゆくは日本でのタイ音楽知名度がもっと上がれば良いと思っています。そして、タイと日本のミュージシャンとの交流がもっと盛んになってくれることを期待しています。
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