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◆ゴーン・フアイライ(ก้อง ห้วยไร่)
今、タイで、特にイサーンの人々に絶大な支持を集めている曲があります。
タイトルは「サイ・ワー・シ・ボ・ティム・ガン(ไสว่าสิบ่ถิ่มกัน)」。日本語にすると「別れないって約束したじゃないか」となるのでしょうか。
歌っているのはゴーン・フアイライという男性歌手。といっても、日本ではまだ「誰、それ?」と思う人が多いでしょうね。
ただ、彼はまったくの新人ではありません。かつて、4プー・バオ・ハオ・ドンドン(4ผู้บ่าวห่าวด๊งด๊ง)という4人のグループのメンバーだった人です。
◆4プー・バオ・ハオ・ドンドン(4ผู้บ่าวห่าวด๊งด๊ง)。向かって右から2人目がゴーン。
この4プー・バオ・・・はタイではそこそこ人気があり、コアなファンも付いていました。コンサートなどでも度々目にし、ファンが熱心に応援しているのを何度か見たことがあります。
◆2014年8月23日、チョンブリー県庁前でのウェーティータイ・コンサートにて
◆4ผู้บ่าวห่าวด๊งด๊ง(4プー・バオ・ハオ・ドンドン)/ห่าวด๊งด๊ง(ハオ・ドンドン)
このグループのメンバーだったゴーンが脱退して、故郷のサコンナコンに戻ったのが2014年後半(4プー・バオ・・・は現在も3人体制で活動中)。
そして故郷サコンナコンに戻り、自ら曲を作ってそれをYouTubeにアップするという地道な作業を始めました。その中の1曲に今大ヒット中の「サイ・ワー・シ・ボ・ティム・ガン」がありました。この曲が初めてアップされたのが2014年9月でした(まだこの時はゴーンラー・ヨートヂャムパー名義)。
◆ก้องหล้า ยอดจำปา(ゴーンラー・ヨートヂャムパー)/ไสว่าสิบ่ถิ่มกัน(サイ・ワー・シ・ボ・ティム・ガン)
ただ、この時は大して話題にならなかったようです。
ギターで曲を作りYouTubeにアップするという地道な作業を繰り返し、いよいよ本格的に活動再開をしたのが2015年に入ってから。
プロモーション用のCDを作り、その後徐々にゴーンの音楽に賛同する仲間が増えて行ったようです。その中に筆者が親しくしているタッサポーン・トーンヂャンがいました。
◆ゴーン・フアイライのFacebookより。2月19日の投稿。
ゴーンとタッサポーンがデュエットしている曲がYouTubeにアップされたのが、2015年5月。筆者はFacebook経由でこの曲を知りました。
◆ก้องหล้า ยอดจำปา&ทัศพร ทองจันทร์(ゴーンラー・ヨートヂャムパー&タッサポーン・トーンヂャン)/สังข์ทอง ลองใจรจนา(サン・トーン、ローン・ヂャイ・ロット・ナー)
しかしこの時、筆者はまだこの動画で歌っている男性が、かつて4プー・バオ・・・のメンバーのゴーンである事ははっきりと認識していませんでした。どこかで見た事あるけど、あまりにも雰囲気が違いすぎたからです。
その後、色々調べてようやく同一人物であることが判明。それにしても、あのクネクネ踊っていた頃から考えると別人のようです。
「サイ・ワー・シ・ボ・ティム・ガン」の予告編動画がアップされたのも、この頃でした。それがじわじわとタイ人の間で広まっていったようです。
◆ก้อง ห้วยไร่(ゴーン・フアイライ)/ไสว่าสิบ่ถิ่มกัน Teaser(サイ・ワー・シ・ボ・ティム・ガン予告編)
Facebookをチェックしていると、友達になっているタイの歌手達がこの曲を歌っている動画を続々とアップしていました。ただ、この時は結構人気あるんだなぁ、くらいにしか捉えていませんでした。まさか、その後こんなにヒットするとは露知らず。
その人気を目の辺りにしたのが、7月11日に行われたゴーンのバンコクでの初の単独ライブの時でした。
その4日前に筆者がタッサポーンのライブに行った時ゴーンも来ていて、タッサポーンから「11日にラマ3世のお店で歌うから来てね。絶対ね。」と何度も念を押されました。でも、その時はタッサポーンが一人で歌うと思っていたんですけどね(笑)。
◆向かって左からタッサポーン・トーンヂャン、ゴーン・フアイライ、ナークワン・ゲーウサコン
当日会場には1時間前ほどに到着。いつもならこれくらいでも全然余裕なのですが・・・。この日は違っていました。
いざ店に入ろうとすると席が無い、と言います。え~、でもゴーンなんて誰も知らないでしょ?何で?その考えがまったく間違えていた事を、この後思い知らされます。
時間が深くなるにつれ、どんどん店に吸い寄せられていくお客さん。我々はタッサポーンの口利きでなんとか舞台前に場所を確保できました。
そして、いざゴーンの登場となった途端、舞台前に人が殺到。ただでさえ狭いスペースがむちゃくちゃです。さらに、例の「サイ・ワー・・・」を歌いだした途端、大合唱になりました。何なの、これ?
◆7月11日、タムナーン・コンイサーンでのコンサートより。
◆ก้อง ห้วยไร่(ゴーン・フアイライ)/ไสว่าสิบ่ถิ่มกัน (サイ・ワー・シ・ボ・ティム・ガン)
それにしてもビックリしました。ここほどまでの人気になっているとは。正直、状況を飲み込むのに少し時間がかかりました。
ゴーンもその客席の熱気に呼応するように、熱のこもったステージを見せてくれました。もちろん、バンコクでの初の単独コンサートということもあったと思いますが、バンドとの一体感も見事で、素晴らしいステージだったとお世辞抜きに言えるものでした。
4プー・バオ・・・の頃からはだいぶ変わったものの、その愛嬌があるキャラクターは健在でその辺りも女性ファンを増やしている要因なんでしょうね。
この人気が具体的な形として現れたのが8月に入ってからでした。タイのあるヒットチャートでは、大手レコード会社の曲を押さえて堂々の1位を獲得。プロモーションでは大手より明らかに劣っている曲がトップになってしまうんですから、その絶大な人気ぶりは想像できると思います。
◆Intensive Watch、8月16~22日のルークトゥン・ヒットチャート
11日から1週間も経たない7月16日にもバンコクのクロンタンにあるお店で、ゴーンのライブがありました。筆者はそちらにも足を運んだのですが、その人気ぶりは変わりませんでした。
到着した時間が早かったので、最初はまばらな客入りでしたが、時間が経つにつれてどんどん増えていき、ライブ開始前にはもう入りきらないだろうというくらいまでにお客さんが膨れ上がっていました。
◆7月16日、イサーン・ラムシンでのコンサートより。
盛り上がりも前回の11日同様、ステージ前はぐちゃぐちゃになっていました。当然、「サイ・ワー・・・」が歌われた時は大合唱でした。
この曲はまだまだ人気上昇中で、今後もますます拡大していくものと思われます。他の歌手にも沢山カヴァーされていて、8月12日モッデーン・ジラーポンがコンサートでこの曲を歌った途端、観客がチップをあげに殺到するという場面にも遭遇しています。
正直、歌としては他愛の無いもので、特別この曲だけのオリジナリティーがあるとは思えませんが、タイの人たちは誰もが身に覚えのある歌詞の内容に共感しているのだと思われます。
ゴーン・フアイライ。意外な所から登場した感じはありますが、ソングライティングのセンスも抜群ですし、このヒットをキッカケに、これからの活躍がますます期待されます。
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