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タイには沢山の重要な記念日がありますが、タイ音楽に関心のあるものにとっては6月13日という日がとても重要な日になります。
この日がなぜ重要な日かというと、ルークトゥンの女王と呼ばれたプムプアン・ドゥアンヂャン(พุ่มพวง ดวงจันทร์)がこの世を去った日だからです。
1992年に30歳という若さで旅立っていってしまったプムプアンの影響力は今も絶大で、彼女の曲はルークトゥンのコンサートなどに行くと、どこでも必ず最低でも1回は聴くほどです。
今やスタンダードになっている曲も沢山あり、歌手が最初に練習した曲がプムプアンの曲だったという人も多くいるようです。
その6月13日には、毎年彼女を追悼する意味で盛大なコンサートが開かれます。
2014年で22回目となる命日も、彼女が祀られているスパンブリー県のワット・タップグラダーンで追悼コンサートが開催されました。
◆追悼コンサートが開かれたワット・タップグラダーンの本堂
この年は6月12~17日の6日間に渡って全部で145組の歌手が出演したコンサートが行われました。
中でも、13日の命日にはこのコンサートを取り仕切っているユイ・ヤートユをはじめ、インリー・シーヂュムポンやタカテーン・チョンラダー、パオワリー・ポンピモンといったグラミー・ゴールドの人気歌手たちがラインナップされ、この日の重要性を物語っていました。
◆2014年のプムプアン追悼コンサートのポスター。出演歌手の全ての名前が記載されています。
◆プムプアンへのお参りをする祠
自分はこの13日のコンサートを実際に現地で観てきました。19時ころに会場に到着したときは既にコンサートは開始され、歌手が代わる代わる登場し、プムプアンの歌を歌い彼女を追悼していました。
そして、20時を過ぎた頃からグラミー・ゴールドの歌手たちが登場する時間となりました。まず登場したのは、プムプアンと同郷(スパンブリー)で彼女の伝記映画に出演しプムプアンを演じたパオワリー・ポンピモン(パオ)でした。
◆パオワリー・ポンピモン(เปาวลี พรพิมล)
今やプムプアンの生き写し的存在となっているパオですが、この日もプムプアンの代表曲である「ナックローン・バーン・ノーク」を歌いながら登場。事あるごとにこの曲を歌っているせいでしょうか、既にパオ自身の歌のようにしなやかな歌いぶりが印象的でした。
それと、この日のパオはこれまでに無かった様なセクシーな衣装で登場。これは新曲の為の衣装のようでしたが、プムプアンの生き写しからステップアップして、パオ自身のオリジナリティーが発揮されるか、今後の彼女が楽しみです。
パオの後に登場したのは、まだ本格的デビュー前の若手歌手、タオ・プーシンでした。
◆タオ・プーシン(เต๋า ภูศิลป์)
彼はまだCDやオリジナル曲が作られていないということもあって、プムプアンの曲「フアヂャイ・タッサガン(หัวใจทศกัณฐ์)」と現在ヒットしているソーン・シンチャイの曲「プア・ガオ」を歌ったのみでした。
まだ若干不安定な要素がそこここに見られましたが、これから本格的デビューに向けて鍛錬してほしいものです。
3番手は、こちらもCDなどはまだ発売されていませんが、徐々に知名度が上がりつつあるモーラム歌手、ノック・ラムヨーンの登場です。
◆ノック・ラムヨーン(นก ลำยอง หนองหินห่าว)
彼女は「グラッセ・カオ・マー・シー」と自分のオリジナル曲を含めて3曲を歌唱。モーラム歌手がプムプアンの曲を歌うというのは意外な感じがしますが、それだけプムプアンの曲が広い地域で親しまれているという証拠でしょう。
ノックの次は、人気急上昇中の若手男性歌手、ジェームス・チンナクルットが登場。彼は、現在ゴット・チャクラパンも歌っている「コー・ハイ・ルアイ(ขอให้รวย)」を歌いながらステージに現れました。
◆ジェームス・チンナクルット(เจมส์ ชินกฤช)
ジェームスはアルバムを発売したばかりというのと、その甘いマスクのせいもあり、熱心な女性ファンが会場に応援に来ていました。それと、ファンサービスでTシャツを配ったり、生写真をあげたりしていたので、客席も盛り上がっていましたね。
そして、グラミーの5人目の歌手として登場したのが、今、バンドも組んで絶好調のタカテーン・チョンラダーです。
◆タカテーン・チョンラダー(ตั๊กแตน ชลดา)
この日もバンドを引き連れて登場したタカテーンですが、まずは舞台袖でプムプアンの曲「ヂュープ・レーウ・ラー(จูบแล้วลา)」を歌いながらステージに姿を見せました。
これが、これまでに聴いたことが無いと思うほどの素晴らしい歌。もともと歌唱力の高いタカテーンですが、プムプアンへの気持ちもこもっていたせいもあるのか、見事なその歌に思わずのけ反りそうになりました(笑)。この歌を聴く事が出来ただけでも、遠くスパンブリーまで来た甲斐があったと、つくづく感じました。
それに、他の歌手は15~20分程度の出演時間でしたが、タカテーンには30分以上時間が与えられていて、彼女たちの今の好調ぶりを物語っているようでした。
タカテーンのステージで大いに盛り上がった後、ステージに上がってきたのは、新曲も好調のアンクワン・ワランヤーです。
◆アンクワン・ワランヤー(เอิ้นขวัญ วรัญญา )
新曲が好調とはいえ、タカテーンが充分に盛り上げた後では、さすがに厳しい状況です。しかも、彼女はまだソロアルバムをリリースしていないので、他の歌手に比べると知名度は劣ります。
それでもアンクワンなりの存在感は出せていた気がします。彼女はその新曲「ピー・スア・ヂャイ・ライ・ガップ・ドーク・マイ・ヂャイ・オーン(ผีเสื้อใจร้ายกับดอกไม้ใจอ่อน)」とヒット曲「ボ・グラー・ボーク・クルー(บ่กล้าบอกครู)」、そしてプムプアンの「ナット・ポップ・ナー・アムプー(นัดพบหน้าอำเภอ)」を歌いました。
そしてグラミー・ゴールド勢のトリは、今や時の人インリー・シーヂュムポンの登場です。
◆インリー・シーヂュムポン(หญิงลี ศรีจุมพล)
この日インリーは朝の情報番組にパオと共に出演し、プムプアンの曲を披露しました。その時にプムプアンをイメージしたヒョウ柄の衣装を身に着けていたのですが、その衣装を着ての登場です。
先のノック・ラムヨーン同様、インリーもモーラムを基本にしている人ですが、この日最もプムプアンの意思を受け継いでいたと感じられたのは、このインリーでした。
メドレーで歌ったプムプアンの代表曲「プーチャイ・ナイ・ファン(ผู้ชายในฝัน)」と「グン・ナ・ミー・マイ(เงินน่ะมีไหม)」は、インリーなりにアレンジはされているものの、まさにプムプアンが今の時代に現れたような、そんな印象を受けました。
この日は彼女自身の曲「イン・ランラー(หญิงลั้ลลา)」、「コー・ヂャイ・ター・レーク・バー・トー(ขอใจเธอแลกเบอร์โทร)」ももちろん披露されましたが、その勢いは生前のプムプアン人気を思い起こさせてくれるようでした。
グラミー・ゴールド勢が一通り出演した後は、ベテランのダーオ・マユリーとこのコンサートの主催者ユイ・ヤートユが登場しました。
◆ダーオ・マユリー(ดาว มยุรี)、ユイ・ヤートユ(ยุ้ย ญาติเยอะ)
彼女らが歌い終わった後、お笑いが登場し12時頃にこの日のコンサートは終了となりました。
プムプアンがこの世を去って22年たった今も、ルークトゥンは彼女あってこその音楽なんだな、実感させられた2014年の追悼コンサートでした。
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