両替レート
|
|
タイ警察中央捜査局(CIB)は、止まらぬ祝祭の渦に、静かに立ち塞がった。人々が踊り、笑い、酔いしれるタイ正月の祝祭ソンクラーン。その熱気を切り裂くように、東北部スリン県の国道214号線に検問が設置された。そこはもはや、通過のための地点ではなかった。秩序と混沌が交差する、その臨界点である。CIBは、その最前線にいた。
車両とともに現れた男たちは、いずれも検問に進入。アルコール検知器によって、次々と数値が突きつけられる。190、171、139、そして72…。それは単なる数値ではない。祭りの熱狂に取り込まれ、常識の境界を越えてなお「走れる」と思い込んだ意志の残響だ。「この程度なら問題ない」──そう心の中で叫んだかどうかは不明だが、その判断が、検問を通過することはなかった。無言で弾かれる言い訳、沈黙の中で提示される現実。それが、アルコール検査という名の真実である。
アクセルを踏んだ瞬間だったのか、それとも祝祭という名の油断だったのか。いや、そんな問いなど意味はなさない。CIBは、車内に違法物品がないことを確認した上で、淡々と法の手続きを進めた。黙って送り出される背中には、何かを失ったというより、「何かに触れなかった」という空白があったと言えるだろう。祝祭の裏側に、光なき静寂が広がるその時──CIBは今日も、沈黙の国道に立ち続けている。
タイ中央捜査局(CIB)
プロフェッショナルで中立、国民と共に。
関連記事
新着記事