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米国の人権団体フリーダム・ハウス(Freedom House)は2025年2月26日、年次報告書「Freedom in the World 2025」を発表し、タイの自由度ステータスを「Partly Free(一部自由)」から「Not Free(自由ではない)」に引き下げました。
報告書では、2024年を対象とした195カ国・地域の政治的権利と市民的自由の状況を評価。タイは前年よりスコアを落とし、厳しい格付けが下されました。
タイのスコアは100点満点中、
2023年版:30点(2022年の状況を評価)
2024年版:36点(2023年の総選挙による改善)
2025年版:34点(2024年の動向を評価)
と推移しており、一時的な民主主義の前進が見られたものの、再び後退したことが数字からも読み取れます。
報告書では、2023年に国政選挙で最多議席を獲得した前進党(Move Forward Party)が、翌2024年に憲法裁判所の判断により解党されたことが、格付け引き下げの決定打となったと指摘されています。
さらに、同党に続いて連立に参加した第二党から選出された首相が、就任から間もなくして退任に追い込まれた一連の経緯についても「民主的民意の否定」として問題視されました。
報告書は、「選挙結果に基づく政権交代を司法・制度面から封じたことは、自由と民主主義の重大な後退を意味する」と警告を発しています。
加えて、報道の自由や言論空間の縮小も評価に影響したと見られます。SNS上の発言に対する刑事摘発の懸念、政府批判に対する自己検閲の広がりが指摘され、独立メディアの活動は年々困難になっているとされます。
また、2023年にタイ国内でベトナム人ブロガーが当局に拘束された後、ベトナムへ強制送還された事件についても報告書は触れており、「タイが国境を越えた弾圧(Transnational Repression)の一端を担っている」と警告しています。
フリーダム・ハウスの分析によると、2024年は60カ国で自由度が低下し、改善が見られたのは34カ国のみ。世界全体では19年連続で自由度が後退し続けています。
報告書では、選挙妨害、武力衝突、権威主義的支配の強化が主要な要因とされており、タイはその象徴的な事例のひとつとして言及されています。
ASEAN域内では、タイはミャンマーに次ぐ厳しい評価を受けており、ブータンやスリランカなど他国の改善傾向と対照的な動きを示しています。
情報出典:Freedom House「Freedom in the World 2025」
Freedom in the World 2025 The Uphill Battle to Safeguard Rights
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