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米国政府は、2025年2月27日にタイから中国へウイグル族40人が送還されたことを受け、タイの政府関係者に対するビザ制限を発表しました。米国務長官のマルコ・ルビオ氏によると、この措置は送還に関与したとされる現職および元タイ政府関係者に適用され、一部の家族にも影響を及ぼします。これは、米国移民国籍法第212条(a)(3)(C)に基づくものであり、ウイグル族やその他の民族・宗教的少数派の強制送還に対するワシントンの反対姿勢を示すものとされています。2025年3月15日にタイ政府メディアNNTが伝えています。
これに対し、タイ外務省はマリット・サギアムポン外相のもとで声明を発表し、米国との長年の同盟関係を強調しました。声明では、「タイと米国の関係は相互尊重と共通の利益に根ざしている」とし、今回の米国の決定について認識していることを明らかにしました。また、タイ政府は中国側から送還されたウイグル族の安全について正式な保証を受けているとし、関係各国との外交的対話を続けていることを強調しました。さらに、タイがこれまで避難民を受け入れてきた歴史にも触れ、人道的原則を重視する姿勢を示しました。
米国の対応に対しては、国際的な議論も巻き起こっています。ロイター通信やタイのTNNニュースによると、ワシントンの姿勢に対する批判が高まっており、特にトランプ大統領が最近発表した新たな移民政策との比較が指摘されています。トランプ政権はバイデン前政権時代に導入された「人道的仮釈放」プログラムを廃止しており、この影響でウクライナ難民24万人を含む約180万人が強制送還の対象となる可能性があるとされています。TNNニュースは、ロイター通信のFacebookページなどで「米国自身が大量送還を進めながら、人権問題を理由にタイを批判するのは矛盾している」との意見が相次いでいると報じました。また、ウクライナ難民の送還が2025年4月にも開始される可能性がある一方で、ホワイトハウスは「最終決定は下されていない」とコメントしています。
タイ国内では、独立系経済学者で政治アナリストのソムチャイ・パクパスンウィワット准教授がTNNニュースのインタビューに応じ、タイ政府の決定について「人道的配慮と法的義務に基づくものであり、中国の正式な保証も考慮された結果」と説明しました。また、今回の米国のビザ制限措置について「米国の貿易政策とも関係している可能性がある」と指摘し、米国が貿易黒字国に対する措置を見直している中で、タイもその対象となる可能性があると述べました。
ラス・チャーリーチャーン外務副大臣も自身の公式Facebookページでこの問題に言及し、「多くの米国人自身が、自国政府の対応に批判的な立場を取っている」と述べました。米国の人権政策の一貫性に疑問を呈する声が広がっていることを指摘し、タイ政府の決定は人道的原則と法的配慮に基づいたものであり、ウイグル族の無期限拘束は現実的な選択肢ではなかったと強調しました。
今後も外交的対話が続く中、タイと米国は政策の違いを乗り越えながら協力関係を維持していく方針です。
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