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ラーメン激戦区であるバンコク。ここに、今、予約を取るのが難しい評判店があります。名前は「No Name Noodle Bangkok」。なんと2024年版のタイ版ミシュランガイドのNEWセレクションに選ばれました。オーナーは福岡県出身のラーメンシェフSHIN(井上虫歯二本)さん。タイに来るまで吉本の芸人としてパンサー尾形さんの弟子となり修行後、2014年から飲食業界に入り“麺ターテイナー”としての活動をスタートさせました。オープンは2021年3月。成功までの軌跡についての話を伺いました。
ーーこちらのお店を開くきっかけは何だったのでしょうか?
SHINさん:2019年からタイへ移住し、某日本食店のマネージャーを務めていたのですがコロナ禍で失職。ゼロからの出発を経験しました。
タイでラーメン屋をオープンすることになり、美味しいラーメン以外名前も看板もいらないということで「No Name Noodle」と名付けました。
SHINさん:実は、約40年前、私の母が地元の福岡でラーメンの屋台をしていたんです。私を育てるために。屋台で働いている母の背中を見ながら、僕はお絵かきをしていたりしました。この店のカウンタースタイルは「お寿司屋さんやおまかせの店みたいですね」とよく言われるのですが、母の屋台のようにお客様に近いスタイルをと考えた結果なんです。
ーーこちらのお店は午前11時から午後3時までとユニークな営業形態をとっていますね?
SHINさん:はい、それには理由があります。店を始めた当時は一人で店を切り回していて、朝起きて麺づくりをして、その作れる限界が35杯だったんです。現在はスタッフたちのおかげで、それが48杯まで増えました。朝5時に1日分の製麺を始め、午前7時に一番だしを取り始め、9時から営業の準備を始めます。営業時間が終わってからも、次の日の仕込みに時間がかかりますので、今の営業時間がやれる限界だと思います。
ーー2024年のタイ版ミシュランガイドにNewセレクションの1店として紹介されましたが、その理由についてどう思われますか?
SHINさん:一つだけ言えることは、オープンから3年間に渡って1年ずつ“物語”をお客様に語っていったということがあると思います。1年目は醤油と塩、2年目は出汁と旨味、3年目の現在は小麦と水つまり麺について語っています。うちの店は ラウンド制をとっていて、1ラウンドが1時間になります。ただラーメンを食べるだけであれば30分で済むと思うのですが、その前後に今申し上げたような物語や文化背景、そして食べ終わった後にQ&Aなどを行うため、どうしても1時間はかかってしまうのです。
ーー日本の職人さんというと無口で何も語らないイメージがありますが、まさにその真逆ですね。
SHINさん:私にはラーメンの師匠が東京、福岡、沖縄にそれぞれいます。皆さんともやはり典型的な職人で無口で熱い人たちです。師匠たちが繋いでくれた麺への思いを麺ターテイナーとして私なりの形で伝えていきたいと思っています。それがラーメンに助けてもらった恩返しになると思っています。
ーーラーメンに助けてもらったとは?
SHINさん:先ほど申し上げたように、コロナ渦で中で職を失い。何かを始めようと思った時、私に作れるのは母に教わったラーメンだけだったなんです。
そのラーメンをタイの人たちに作ったらものすごく喜んでくれたんです。ラーメンが私に新しい人生のチャンスをくれたのです。
ーー次の目標は何でしょうか?
SHINさん:ミシュランのNewセレクションに選ばれたことで、次の段階であるビブグルマン(価格以上の満足感が得られる料理を提供するレストランに授与される賞)、そして星店へのチャンスがあると信じています。ミシュランの1つ星を獲得し“M-1”に輝くことが今の目標です。
ーー漫才(MANZAI)のM-1に対して、ミシュラン(MICHELIN)のM-1ですね!
SHINさん:日本のラーメン屋さんの多くは食材価格の高騰などにもかかわらず価格を上げられず、苦しみ頑張っています。海外ラーメン組としてそんなラーメン仲間の希望の星になればと思っています。ラーメンはお寿司などのように素晴らしい日本の食の宝だと私は思ってます。
[営業時間]
午前11時~午後3時(月曜定休日)
[住所]
2 Attha Kawi 1 Alley, Khlong Tan, Khlong Toei, Bangkok 10110
[ウェブ]
https://www.facebook.com/nonamenoodlebkk/
https://www.instagram.com/no_name_noodle/
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