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「日本人が海外で一番警戒しなければならないのが日本人」と言われることがあります。頼れる人が少ない海外で日本人同士ということで気を許してしまう人の、心のスキマに付け込んで騙そうとする悪い日本人もいるのだとか。また資産状況を伝えることもご法度で、もしかしたら、その資産を狙う人物が現れないとも限りません。
日本人ブロガーのTさん(当時33歳)がバンコク・ラチャダー通りのアパートから姿を消したのが2008年8月5日のことでした。 翌6日にはアユタヤのガソリンスタンドのゴミ箱からTさんの腕時計などが見つかり、9日になってナコンラチャシマ県の森の中で遺体となったTさんが発見されたのです。
Tさんの部屋に忍び込む人物の防犯カメラの映像が公開されて「犯人は日本人らしい」となると、タイの日本人社会はこの話題で持ち切りになりました。特にタイ在住日本人が集まるインターネット匿名掲示板「タイちゃんねる」(閉鎖)では、盛んに情報交換が行われていたようです。
Tさんは殺害される一ヶ月ほど前、安田誠のペンネームで「外こもりのススメ」という海外生活の指南本を出版したばかりでした。外こもりとは、海外で引きこもること。当時のタイは今よりも物価が大分安く、のんびり外こもりするには、もってこいの場所だったようです。
Tさんは当時、株やFXの投資、アフィリエイトなどで生計を立てながらブログで情報発信をしており、ブログを介して人と会うこともあったと言います。そんな中で出会ったのが浦上剛志、Tさんを殺害した犯人でした。
浦上剛志の犯行の動機は、Tさんに教わったFXで大きな損害を被り、その怒りがTさんに向いたためと言われています。つまり投資トラブル。浦上剛志はTさんを殺害して、Tさんの資産を奪い、損した分を取り返すことを思いついたようです。
2008年8月5日、浦上剛志はTさんを呼び出し、仲間のMと共に監禁。同日にMが外出中に、浦上剛志はTさんの頭を浴槽に沈めて殺害しました。Mは殺害には直接関与しておらず、戻ったらTさんが死亡していたため大変驚いたと言います。しかし二人は既に共犯。浦上剛志とMはTさんの遺体をナコンラチャシマ県の森に運び、捨てた遺体にバナナの葉をかけて、その場を後にしました。そして翌日、2人は日本に帰国したのです。
後に、浦上はQ&Aサイトで殺人や遺棄の方法などを調べていたことが明らかになっており、犯行の内容とも一致する質問も残されいて、Tさんの殺害は周到に計画された犯行だったと言われています。
すでに帰国していた浦上剛志とMですが、タイ警察からTさん殺害の容疑者であると特定され、タイの裁判所は2人の逮捕状を発行。Mは2008年9月に岐阜県警に逮捕され、2010年12月8日に懲役13年の実刑判決を受けました。(既に出所している可能性があるため、本サイトでは実名でなくMとしています)。また、浦上剛志は2009年4月に別件で警視庁に逮捕され、2011年3月18日には強盗殺人罪などで無期懲役の判決が下され、現在も服役中です。
[当時のタイムライン]
2008年8月5日 Tさん(当時33歳)が行方不明
・浦上(当時30歳 大阪府)とM(当時30歳 愛知県)がTさんを監禁
・MはTさんの部屋へ行き、パソコンとキャッシュカードを持ち出し(防犯カメラに映る)
・MがTさんの部屋へ行っている間、浦上はTさんを殺害
・Mと浦上でTさんの遺体をカオヤイに遺棄
2008年8月6日 浦上とMは帰国
2008年8月6日 アユタヤのガソリンスタンドのゴミ箱からTさんの腕時計や鍵等を発見
2008年8月9日 ナコンラチャシマ・カオヤイ国立公園で、バナナの葉に覆われたTさんの遺体を発見(歯の治療痕などから確認)
2008年8月21日 タイ警察がMと浦上に逮捕状(携帯電話の通信記録から)
2008年9月16日 M逮捕
2009年4月 浦上逮捕、口座売買を目的とした広告を出した容疑、後にTさん殺害容疑で指名手配中と発覚
2010年12月8日 Mに懲役13年の実刑判決
2011年3月18日 浦上に強盗殺人罪などで無期懲役判決
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