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当初に予定されていた日程での選挙実施が不可能になったことで、選挙を求める声が大きくなっているニュースの続報です。
現在、選挙の早期実施を求めるグループは2019年3月10日までの選挙実施を求めており、そのために必要な今週の1月18日(金)までの選挙に関する法律の公布がなければ、翌1月19日の土曜に民主記念塔で抗議集会を行う予定としています。
以下の既報を配信した通り、在タイ日本大使館も注意を呼びかけています。
■バンコク・民主記念塔前で反政府系集会、2019年1月19日(土)夕方に
このような情勢の中、2019年1月16日のタイ大手英字メディアのBangkok Postが、タイの陸軍トップであるアピラット陸軍司令官が、抗議をしている勢力への警告を行った事を報じています。
■Apirat tells protesters not to “cross the line”(アピラット陸軍司令官、抗議集会に「一線」を超えないよう警告)|Bangkok Post
上記報道の副題は「監視していると、陸軍トップが警告(We’re watching you, army chief warns)」となっています。
報道によると、タイの陸軍のトップにあたるアピラット陸軍司令官は、この抗議集会を予定している勢力に対して警告を発しました。
アピラット司令官は抗議を予定している勢力に、「皆さんは、自分たちの要求を満たすために、他者に期限を課しているのですから、皆さん自身の行動にも一線をひき、その一線を越えないようにしなければいけません。」と説明しました。その上でアピラット司令官は「活動家は政治集会を開く権利がありますが、それは法を遵守して、一線を越えない範囲で行なうべきものです」と語りました。
またアピラット司令官は、抗議集会によって周囲のビジネス等への悪影響や、観光業への悪影響を及ぼしかねないと懸念を表し、その上で、抗議集会の間は治安維持のための要員が必要であろうと見解を語りました。
加えて、アピラット司令官には抗議集会への対応には長年の経験があり、抗議集会を開催しているグループは「昔ながらのいつものグループ」だと付け加えました。
そしてアピラット司令官は、選挙に先立って治安維持のため、各政党の選挙活動を監視するための治安当局者が選定された事を語りました。
これが、報道されている内容の概要です。
昨年の10月、タイの陸軍司令官に就任したアピラット陸軍大将。タイの陸軍司令官のポストは実質上、タイの全軍事力を束ねると言われているポストです。
タイはこれまでの歴史で10回を超える軍事クーデターを経験しており、政治的な混乱が発生すれば、軍事クーデターが起きる現実味は高い状況にあります。現軍政も、2014年5月に当時陸軍のトップだったプラユット陸軍司令官が軍事クーデターを起こし、インラック政権を倒して成立し、現在に至るものです。
アピラット陸軍司令官は昨年の2018年10月の就任時の記者会見の中でも、記者から「また軍事クーデターを起こす用意がありますか?」と質問されると「政治が社会混乱の根本的な要因でない限り、クーデターは起こりません」と意味深な発言をして、クーデターは無いとは明言しませんでした。
そのため、政治が原因で国内が混乱した状態となれば、軍がこれを収めるために全権掌握に踏み切る事もありえる事を示唆したものと考えられています。
そのアピラット陸軍司令官からの、一線を越えないようにという警告と、活動を監視しているという発言のため、バンコクポストも大きく報じています。
このような中で抗議集会はどのように行われるのかはわかりませんが、外国人である日本人の皆さんは、出来るだけ予定されているエリアには近づかない等、安全確保には十分にご注意下さい。
こんなタイの政局を見ていて、思い出した言葉です。
「世界には二つの力しかない。
剣と精神の力である。
そして最後は、精神が必ず剣に打ち勝つ。」
ナポレオン・ボナパルド(1769年~1821年)(*)
実際に帝国を統治するに至った人間であるナポレオン自身が、精神の力は必ず剣に打ち勝つと語っており、社会の統治において必要な力とは何かを考えさせられる言葉です。
外国人としては、タイが剣の力ではなく、精神の力をもって、平和的な形で民主化を進められる事を願っています。
(*)ナポレオン・ボナパルド
フランス革命で登場し、その後はフランス第一帝政の皇帝となった、その戦術(Tactics)はまさに天才というべき、ご存知ナポレオンです。
そのナポレオンの言葉で有名な言葉の一つが、上記の言葉です。
類似したナポレオンの言葉には、こんなものも。
「私は百万の銃剣よりも、三枚の新聞紙をもっと恐れる」
戦闘の戦術において本物の天才であったナポレオンでも、実際に国を統治する人間となり、統治のために必要なのは剣や銃剣の力ではないと理解していたのだと思わされる言葉で、ナポレオンの言葉の中で筆者の好きな言葉です。
ちなみにナポレオンの言葉では「余の辞書に不可能の文字は無い」という言葉が、おそらく世間では一番有名な言葉です。この言葉はナポレオンが口にしていたと伝わる言葉なんですが、その元はフランス語で
Impossible, n’est pas français.
であって、これは直訳すると、「不可能は、フランス語ではない。」とか、もしくは「不可能は、フランス的ではない。」なんで、これを少し意訳して、カッコよくしたものではないかと思われます。
ただ、この「不可能は、フランス語ではない。」という言葉はナポレオン自身が語っていた事を明確に示す記録はないので、後世の創作ではないかとも言われていますから、筆者としては上記の言葉の方が、ナポレオンの言葉としてふさわしいのではないかと思います。
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