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俺がファジアーノ岡山でプレーしていた約10年前、埼玉県さいたま市に住む父ちゃんの元に一本の電話が届いた。「もしもし、俺だけど…」
「仕事でヘマをして急にお金が必要となったんだけど…」でも父ちゃん、一瞬で”オレオレ詐欺”だと感じたみたい。こんな経験も無いということで少し話を聞くことにしたそうだ。「今日中に振り込んでくれ」とお願いをされたところで「なんでサッカー選手が夜な夜な接待してんだよ。明日大事な試合で遠征中だろ!?」と父ちゃんが言い終える前に電話は切られていたという。父ちゃん、してやったりである。
では何故父ちゃんが気付いたか…「お父さん、お母さん」と話す犯人に「”いとたく”じゃない」と。昔から俺「父ちゃん、母ちゃん」と呼んでて、頼み事をする時だけ「父上」や「お父様」って話しかけてるからね。
10年の月日が流れ、俺はタイで生活をしている。「もしもし、俺だけど…」今回は母ちゃんのところへ電話が入ったようだ。「どうしたの、タイから帰ってきてるの!?」と先に犯人に”いとたく”の情報を話してしまった母ちゃんは後に悔しがっていた。下血で倒れて救急車で運ばれている最中に気持ち悪くなりコンビニのトイレに入ったが、そこで現金が入った鞄を忘れてきてしまったそうだ。日本語が堪能なコンビニ店員の自称タイ人から連絡が入ったり、上司から”気をしっかりなされて下さい”と連絡が入ってすっかり信じ切ってしまったそうだ。
冷静に考えると突っ込みどころが満載。円での話をしているし、タイではトイレに行きたければコンビニでは無くガソリンスタンドである。時差があることも理解せずに「何時までに振り込んでっ!!」とお願いしていた。でも母ちゃん、100万円を請求され「そんな大金、お父さんに相談しないと無理なのわかってるでしょ」と。17時に帰ってくるから待ちなさいという母ちゃんに犯人は「それでは時間がっ!!」って言うんだけど…タイではまだ15時ですから。
17時に掛かってきた電話に出た父ちゃんは「もしもし、お父さん…」と話し掛けた犯人に「もぅ声が全然違う」と”オレオレ詐欺“10年ぶり2度目の撃退。なかなか父親を”父ちゃん”という奴はいないよね、こうして「微笑みの国からの”オレオレ詐欺”」は終わりを告げた。
十年後、俺のところにもかかってくるのかな、「サワディーカップ、俺だけど…」。でも俺も直ぐに気付くだろうね、息子には”たっくん”て呼ばれているから…。
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