2015年8月30日掲載
バンコク市内で乱立するサッカースクールで勝ち残っていくためには、スクール自体は当然のこと、コーチ自身も個性や経歴を売りにして行かないといけないと感じていた。我がCreer fcは”元Jリーガーでタイでもプロ選手としてプレーしたコーチ陣が指導にあたる”というのは多いなる武器なのであるが、それだけでは弱いのかなと…だから今回の日本滞在で本帰国する選手達へのレール造りというのも目的として持っていた。
現在俺は中学一年生の女子選手を男子と混ぜて指導している。負けん気が人一倍強い彼女はゴールへ向かう姿勢はピカイチ、実際中学生の練習に遊びに来てくれる現役選手達は「彼女面白いね」と直接アドバイス等を与えてくれる。だけどもっともっと同世代の男子とやり合えると感じている俺は1”試合1得点”という課題を課し、特には厳しく指導している。
そんな彼女から「来年の春に本帰国を予定しています。将来”なでしこリーグ”でプレーしるのが夢なのですが、同世代の日本の選手達は現在どのようなレベルに居るのか、この夏実際に肌で感じてみたいです」と相談を受けた。彼女が帰国を予定している地は大阪、”マジかぁ、関西方面で女子チームにはコネが無いなぁ”と正直悩んでいた。
ある日指導の合間を縫って昼食を食べようとお店に入ると、偶然タイへ来られていたセレッソ大阪のスタッフと遭遇。考えるより先に行動していたね、「彼女になんとかチャンスを…」と頼み込んでいた。
早速彼女の履歴とプレービデオを送信し、「是非とも」とお願いを繰り返した。すると後日その方よりメールが届いた。「セレッソ大阪ガールズの練習への参加許可を貰いました」とのこと。早速日程を調整し、いざ日本へ…。
俺自身も中学年代の選手達の実力をこの目で確かめたいと思っていた。ガールズの姉貴分”セレッソ大阪レディース”は高校年代の選手達で編成されているが、”なでしこリーグ”の3部にあたる”チャレンジリーグ”で大人相手に昇格争いを演じている育成型のチーム。育成型…ここに俺自身魅力を感じ、教え子に「挑戦して来なさい」と推薦をした。
しかし残念な事に彼女、渡日直前に怪我をしてしまい今回練習参加は叶わなかったんだよね。だけど一週間チームに帯同して公式戦2試合を観戦することで、自分自身で同世代の選手達の実力を感じて来てもらった。俺も1試合を観戦し練習も視察、その中でセレッソ大阪レディース・ガールズの監督をはじめスタッフの方々に「来年の春までに(セレッソの選手達と)やり合える様に練習させます。そこで自信を持って送り出せるまでに成長を遂げていた場合、再度彼女にチャレンジするチャンスを与えてやって下さい」とお願いをさせて貰った。
早速タイへ戻って来た彼女に「どうだった!?」と質問をしてみた。やはり”上手い”と感じたようなのであるが、”頑張れば手の届く距離にいる”という事が実感出来たようだ。残された時間は半年強、桜の季節に桜色のユニホームを彼女が纏えるように”熱く、熱苦しく”指導して行こうと意を決している。
伊藤琢矢(いとたく)
アマチュアに拘りプレーを続けた20代。33歳でのプロ契約を期にJリーガーを目指す事に。大宮・岡山・北九州とJリーグ昇格に携わり、自身は36歳でJのピッチに立った。2011年よりタイに活躍の場を移した「夢追人」。
いとたくブログ『夢追人』
Regista in Thailand