2014年2月14日掲載
フィールドど真ん中でスタメン全員で円陣を組んでこれから始まる戦いに向けて選手それぞれが確認事項や胸の内の想いを口にする。そしてキックオフの時を待つ試合に向けて大声を張り上げ気合いを入れる。子どもの頃からやっているし、この行為は国を変えたタイでも共通であった。
俺が本格的に指導をし始めた頃のINFINITOの中学生は…はっきり言って弱かった。その癖なぜか初戦から全開で行かないチームであった。しり上がりに調子が上がってくるけど…結局は勝てないチーム、そんな印象を持っていたね。実際ダラ~ッと試合に入っていて…「”気合い”とかが格好悪いと思われている現代っ子なのかなぁ」なんて熱苦しい魂を持つ”いとたく”は多いに悩んだりもしたね。
でもこの中学生チームの親御さん達は非常に熱心に選手達のサポートをしてくれていた。毎週日曜日の試合時は遠くまで足を運び応援を続けていたし、「この子たちを強くしてやって欲しい」という想いがヒシヒシと伝わってきたんだよね。大会登録メンバーに人数が足りない時などは、INFINITO外の選手達に声をかけて大会にエントリーをしたりしていたから…そんな懸命にサポートする親御さん達を見ていたら、やっぱり強くしてやりたいと思わされちゃうよね。
ある大会で1勝でも、親御さん達の前で勝ち星を挙げる事が恩返しになるのかなと、「ここで踏ん張れねぇようじゃ、サッカーをやる資格はねぇ。泥臭くても良い…日頃からサポートをしてくれ、会場にまで足を運んでくれている親御さん達に勝ち星をプレゼントしてあげることが、最大の恩返しになるんだぞっ!! 気合い入れて行け…大声張り上げて円陣組んで来いっ!!!」と選手達を送り出した。
“絶対に負けられねぇ戦い…俺も気合い入れて指揮してかねぇとな”なんてベンチで準備をしていたところ、情けねぇ円陣の声が俺の耳に届いてきた。
「いつ勝つの!? 今でしょ~っ!!!」
正直”もぅ、負けちゃいなよ”って思ったけどね…その試合はきっちりと勝っていたっけなっ。そんな彼らは現在タイ人の同世代の選手達とやっとやり合えるレベルにまで成長してきている過程。準優勝ばかりでタイトルを掲げられている訳では無いが、近い将来彼らがINFINITOにタイトルをもたらしてくれることを俺は確信している(ちなみに上記のふざけた円陣を彼らは自主的に封印しているようである)。
伊藤琢矢(いとたく)
アマチュアに拘りプレーを続けた20代。33歳でのプロ契約を期にJリーガーを目指す事に。大宮・岡山・北九州とJリーグ昇格に携わり、自身は36歳でJのピッチに立った。2011年よりタイに活躍の場を移した「夢追人」。
いとたくブログ『夢追人』
Regista in Thailand