2012年12月25日 掲載
“日本人選手がタイでプレーする意義を高める”・・・そのためにも、今回のAFF Suzuki Cupは是が非でも制して欲しかった。今大会のタイは優勝に値する戦力・内容であったし、”優勝するだろうなぁ”と楽観視していた。チームの若返りも成功していて運動量豊富のチームは、ボールポゼッションで相手国に劣ることはなかった・・・。しかしである、12月21日(土)に行われたタイ・スチャパラサイスタジアムでのシンガポールとの決勝第2戦目は1-0で勝利するも、12月19日(水)第1戦アウェイ(シンガポール)で1-3と敗れた事が響き、得失点差にて準優勝に沈んでしまった。
では”何故今回優勝出来なかったのか”・・・僕なりに(解説者を気取り)分析してみた。そこで2つの非常に大きな問題点が浮かび挙がった。
1) 最初から狙いにいっていた今大会のSuzuki Cupに標準を合わせた年間スケジュールが組めなかったこと。毎シーズン前にサッカー協会から各チームに年間スケジュールが出されるが、チーム関係者は「こんなのあてにならないから・・・」と端から信用していない。以前のコラムで書かせてもらったけど、その週にならないと試合予定が分からないのがタイの現状だ。今シーズンは無理やり10月までに国内の試合を終了させるためにシーズン途中からいきなり週2試合のゲームで国内リーグ戦、カップ戦2大会を消化しなければならなくなった。選手達のシーズン終盤での消耗度(疲弊度)は、観戦しているこちらにも明らかに伝わってきていた。試合内容の質が悪いというか、選手達が終盤に走れなくなる試合を何度か目にする事で、本当にこのタイトスケジュールは酷に思えてしまった。
2) アウェイでの戦いが経験出来なかったこと。11月の準備期間や年間の代表強化試合で今年は一度も国外に出れていない。これは本大会ホーム5戦全勝、アウェイ1分1敗という数字で如実に現れている。アウェイの試合に対する移動、環境の変化を体験出来なかったのは痛手。更に、準決勝・決勝のアウェイ戦で主審の笛が不公平だと憤るタイ人サポーターが沢山いたが、アウェイの笛に選手達だけでも慣れておく必要があったのではないだろうか。
近年のタイサッカー界の成功、発展は凄まじいものがあるのは誰もが認める事実。充実した設備、毎試合沢山のサポーターの前で試合が出来る喜びを国内で手に入れられてしまうため、そのことに満足をしてしまうタイ人選手達が多いように感じる。そんな中で、今オフシーズンに海外への移籍が噂されるタイ代表No.10”Teerasil Dangda”選手(Muangtong所属)の動向は非常に興味深いものがある。
今回優勝したシンガポールは帰化選手が多く、真のナショナルチームでは無く、シンガポールリーグ選抜のような感じがした。タイ代表が強化のためにこれをやり出したら本当の強化には繋がらないと思う。だからこそ優勝して”帰化選手の大量輸入なんて必要ない”と証明する必要があった。それと東南アジアに沈んでいるレベルでは、ハード面もソフト面も無いという事をしっかりアピールして欲しかった。そんなハイレベルなタイリーグへ日本人が沢山挑戦しに来て活躍するイメージが出来ていたのだけれど…この夢は2年後(Suzuki Cupは2年ごとに開催)へとお預け、少し寂しいタイサッカー2012年シーズンの終幕であった。
伊藤琢矢(いとたく)
アマチュアに拘りプレーを続けた20代。33歳でのプロ契約を期にJリーガーを目指す事に。大宮・岡山・北九州とJリーグ昇格に携わり、自身は36歳でJのピッチに立った。2011年よりタイに活躍の場を移した「夢追人」。
いとたくブログ『夢追人』
Regista in Thailand