2012年9月12日 掲載
ユース年代の日本のチームとタイのチームの交流、元イングランド代表監督エリクソンのTPL”BEC Tero Sasana”への就任等盛り上がりが最高潮に達している感があるタイサッカー事情。それを否定する訳ではないが、今回はタイサッカーに対して警報を鳴らすようなコラムを書こうと思う。
ある日突然元チームメイトから「タイを去ろうと思っている」とメッセージが届いた。詳しく問いただしてみると「給料未払いが続き、VISAのケアもされていない」という事だった。僕が契約を解除して引退したのもこの理由が原因の1つなのだが、何故同じ過ちをこのチームは繰り返すのだろうか!?
タイのチームの家族へのケアはビッククラブ以外は無いと考えた方が良い。ワークパーミットに関してはTPLでも発給されないチームがあるし、Division 1では”書類は出すけどお金は出さない”等のチームが1/3、Division 2では約半数のチームが何らかの問題を抱えている。しかもチーム関係者がこの現状を把握していないので、「いつかワークパーミットやVISAは手続きしてくれるでしょう」という考えを持っているが、これは大きな間違いである。
給料未払いをするチームも毎年存在する。去年は僕の知る限り2チームが、今年は4チームが遅配・未払いをしている。ましてや国が定める外国人労働者の最低賃金に達していないチームがDivision 1のカテゴリーのチームさえ多数存在する。タイ人は口では「給料払えよっ」と陰で言うが、タイではオーナーの権力は絶対、代理人でさえ給料について聞く事さえ出来ないし、オーナーに睨まれてしまうとタイでサッカー選手として生きられなくなるから面と向かって文句は絶対に言わない。僕が毎回サラリーや待遇の事でプレジデントに対して意見をすると、「また始まったよ…」という雰囲気になっていたし、「伊藤は上の者に盾を突くタイのタブーをしている」と言ってくるスタッフさえいた。
9月に入り、10月下旬に全ての公式戦が終了するが、タイのチームは給料未払いに対してどうするかというと契約満了日まで逃げ切ろうとする。そこで”来年の契約をしない旨”を伝えると他のチームを探したり、国に帰る手続きをしなければならないので、”給料未払いの追求などして来ないであろう”という腹積りなのであろうか。
オーナーの力が絶対権力を持つタイサッカー、日本のJリーグのように協会がトップに立ってチームを管理出来ず、協会の影響力は残念ながら微力のように感じる。盛り上がりを見せるタイサッカーだからこそ環境を整える必要があるのではないか!?日本のようにJリーグ準加盟の段階で競技場のキャパ、ユース等の下部組織の整理、経営体制の審査等のハードルを設けるのも手であろう。
タイ人は「みんな出ていないのだから…」を言い訳にするが、外国人としてこの国で生活するための許可証の手配を怠るという事がどれだけの罪かを今一度考え直して欲しい。ちなみにメッセージをくれた元チームメイトは、僕が代理人を紹介したが結局は移籍が叶わず、同じチームでプレーしているが…相変わらず給料未払い&遅配の状況が続いているという…。
アマチュアに拘りプレーを続けた20代。33歳でのプロ契約を期にJリーガーを目指す事に。大宮・岡山・北九州とJリーグ昇格に携わり、自身は36歳でJのピッチに立った。2011年よりタイに活躍の場を移した「夢追人」。
いとたくブログ『夢追人』
Regista in Thailand