2012年8月21日 掲載
昨年4月の事、VISA取得の為にラオスに行った帰り道、タイ人代理人に電話をして「明日から練習に合流したいからチームに連絡して欲しい」と伝えると面倒臭かったのか「休んじゃいましょうよ」と訳の分からない返答が返ってきた。僕は当時英語もタイ語も喋れなかったので、日本語連絡が喋れるタイ人代理人に頼り切っていた。でもこの人、本当に適当なんですね…だから自分で英語の文をノートに書いて英語の分かるスタッフに「明日の練習場所と時間を教えてくれっ!?」と聞いてみる事にした。すると「明日は10時集合、試合だからユニホームを持って来い」と言われた。
大型バスに揺られて3時間、ウトウトしていた自分に「お昼食べるぞっ」とチームメイトが声を掛けてきた。「ずいぶん遠くまで行くんだなぁ」と思っていたんだけど…昼食を食べ終わってから更に2時間近くバスに揺られていたので、アフリカ人選手に「今日は泊まりか!?」って聞いたら「そうだ、試合はナイターみたいだぜっ」との答え。「泊まりなんて聞いてないんですけど…」と思いながら「んじゃあ明日の帰りも遅いね」なんて言ったら「何も聞いてないのか!?今日から一週間合宿だぞっ」だって…(嘘でしょ!?)。
家内は絶句していた、「いってきまぁ~す」と普通に家を出た旦那が突然「拉致れた、帰りは一週間後になるから…」と電話してきたら、それはそうでしょう。僕は宿泊先の従業員に頼んで近くのショッピングセンターに連れて行って貰った。そこでパンツとシャツと購入、毎日洗濯をする事で一週間乗り切る覚悟を決めた。
合宿中日に組まれた練習試合に敵が現れなかったり、夜酒盛りをしていた選手達が朝練習に来なかったり…プロとは思えないような合宿だった。最終日にフラッ顔を出したプレジデントが「あと一泊して行けばっ」と余計な事を言ったため合宿が1日延長にもなった。
この合宿の食事の時にこんな事があった。…肉料理が出て、スプーンとフォークしかなかったため器用に肉を切ってフォークを持ち替えた瞬間「伊藤、何してんだよっ」とコーチがいきなり声を掛けてきた。「俺、なんか悪いことしたかなぁ!?」と話を聞いてみると”行儀(食事のマナー)が悪い”というのです。「こうやって食べるんだよ」と右手にフォーク、左手にスプーンを持って食事を口に掻っ込み始めた。このタイスタイルを初めて見て正直引いてしまった。「子供達がこの食べ方を日本でやったらどうしよう」とこの時は真剣に悩んだ…今では当たり前のように僕もこの食べ方をしているのだけれど…。
タイに来て日が浅い家族を残して、突然予定外のチーム合宿。「お帰り~っ!!」と元気良く迎えてくれた子供達を見て、涙ぐんでしまった。ほんと想定外の事が当たり前のように起こるタイライフ。「(精神的に)強くなるね」とタイでの生活に覚悟を持った拉致事件(!?)であった。
伊藤琢矢(いとたく)
アマチュアに拘りプレーを続けた20代。33歳でのプロ契約を期にJリーガーを目指す事に。大宮・岡山・北九州とJリーグ昇格に携わり、自身は36歳でJのピッチに立った。2011年よりタイに活躍の場を移した「夢追人」。
いとたくブログ『夢追人』
Regista in Thailand