2012年11月18日 掲載
僕がファジアーノ岡山に移籍した31歳の時、何かの雑誌で三浦和良(カズ)選手のインタビュー記事を読み、励みになったのが『31~32歳の一般的にベテランと云われる選手達は、俺からしたら小僧だ』という言葉。当時一番年齢が近い選手でも4つ下で、コーチの方が年齢が近いという状況だと、口では『年齢差何て感じない』と言っておきながら、意識しちゃってたんだよね。
30代になって明らかに意識せざる負えなかったのは、スピードの衰え。ディフェンダーだった僕は、一度抜かれても追いつけるから大丈夫的な怖いもの無しのディフェンスを20代の頃はしていたんだけど、いつの日からか相手との間合いを考えて先に良いポジションを取るようになっていた。
35歳近くになってからは、冗談抜きに疲れが2日目に出るようになってきていた。細かい怪我も多くなってきて毎日マッサージを受ける等ケアにかける時間が多くなっていた。晩年はオペを初めて経験、足首は以前から悲鳴をあげていたんだけど、2週間に1回足首に溜まる水を抜いてヒアルロンサンを潤滑油的な役割として注入してたっけ。筋トレは”やると身体が大きくなってしまっていた20代”から、”やらないと維持できない30代”へと目的が変化していた。
正直引退した僕は、もう1度あの生活をやれといわれても、もう出来ない。疲れが抜けないんだけど試合にはベストに近い状態に身体を持っていく。プロテインやクレアチン等薦められるモノはとことん試して自分のコンディション作りに最適な方法を日々模索していたからね。それ程大変な作業を選手達は毎日続けている訳だ。
そこでカズ選手である。彼は僕の7歳上、未だ現役のサッカー選手で、今回はフットサルの日本代表である。彼は年齢を重ねるごとに中盤をやったりフリーキックだったりと武器を増やしているところが凄い。日本代表という夢を追いかけ続けた結果、今回の代表入り。僕なんかが使ってはいけないよね、”夢追人”という言葉は…究極の夢を追いかける形を今回見せつけられた感じがした。
”ジョホーバルの歓喜”の試合で、交代する時に「俺!?俺!?」と交代に納得がいかない表情を浮かべた彼が非常に今でも印象に残っている。まぁ選手交代の入れ替えが激しいフットサルでは仕方が無いし、あれが適切な判断なんだけど、初戦のブラジル戦で自分から仕掛けてシュートまで行って、立て看板にぶつかり肘を擦り剥いた(火傷!?)時、ベンチに自分から”交代してくれ”とゼスチャーしていた姿はちょっと僕には寂しく移った。カズ選手も今回は相当気を使っているのだなぁと勝手な想像をしながら…。
King-Kazuの代名詞”11番”や移動バスの一番後ろの”King-Seat”と呼ばれるところは当然確保、彼らしい1面も覗かせていた。更に彼が加入した事で沢山のタイの日本人が「彼がいるなら…」とスタジアムに足を運んだと思う。今回の彼の存在自体がサッカー界にとってもフットサル界にとっても内容の濃い足跡になったのではないか。
よく岡山で「同世代の伊藤選手が頑張る・身体を張る姿が、みんなの力になっている」とサポーターに云われていたのだが、今回全く同じ事を、受ける側の人間として僕はカズ選手から力を貰った。一緒に観に行った友人や家内もそうだと思う。やはりサッカー界の日本のキングは、フィールドを変えた今回も、変わらずキングとして君臨し続けていた。
伊藤琢矢(いとたく)
アマチュアに拘りプレーを続けた20代。33歳でのプロ契約を期にJリーガーを目指す事に。大宮・岡山・北九州とJリーグ昇格に携わり、自身は36歳でJのピッチに立った。2011年よりタイに活躍の場を移した「夢追人」。
いとたくブログ『夢追人』
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