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アートマガジン bkk UNZINEがバーンノックカミン財団と提携し2024年10月11日(金)から13日(日)に開催した「第3回 BKKコミックアートフェスティバル」。バンコク芸術文化センター (BACC)の会場にはタイ漫画の現在を俯瞰する作品展示、交流ブースなどが設けられました。12日(土)には日本からマンガ家のカネコアツシ先生が特別ゲストとして登場、ファンとのQ&Aなどを行いました。
カネコ先生に貴重なお時間を頂き、お話を伺いました。
カネコアツシ
https://x.com/kaneko_atsushi_
https://www.instagram.com/atsushi_kaneko_
ーー今回のイベントに参加されたきっかけを教えてください。
カネコ先生:もともとタイに興味があって行ってみたいと思っていたところ、このイベントを運営されているbkk UNZINEさんからオファーを頂きました。去年もお話があったのですがスケジュールの都合がつかず、今年やっと実現しました。
ーータイについて来られる前にどんな印象がございましたか?そして実際にお見えになっていかがでしたでしょうか?
カネコ先生:アジアの中でも発展が続くエネルギッシュな所という印象がありました。来てみると、予想を超えた大都市なのに驚きましたね。また人々が穏やかで、治安の良さも感じます。夜道を歩いていても、ピリピリした感じを受けませんでしたし。
街を散策していてギャラリーが多いのにも驚きましたね。中でも「オアシス」という古い建物を改築したアートスペースが魅力的でした。
ーータイのマンガ家の作品についての印象はいかがでしょうか?
カネコ先生:今回のイベントの展示や街の書店でチェックしましたが、多様なスタイルの作品があるという印象を受けました。タイ独自のタッチであったり、ヨーロッパ風だったり、マンガ風だったり、アート風だったり。
ーー創作のルーツについて少し伺ってもよろしいでしょうか?物語を作ろうと思うきっかけになったのがスタンリー・キューブリック監督の「時計仕掛けのオレンジ」ということをおしゃっています。先生は1966年生まれで、私は1963年生まれなんですが、当時はインターネットどころか、ビデオが出始めの頃で、ソフトも市場に出ている物が少なかったと思います。「~オレンジ」も含めて、先生が影響を受けられたと思われるクラシックな作品とどうやって出会ったのでしょうか?
カネコ先生:私の故郷が山形県の酒田市なんですが、映画館の数が多く、2本立て上映が主だったので、そこで映画を観まくっていました。「~オレンジ」との出会いもそこですね。
ーー「~オレンジ」と同時上映だった作品を覚えていらっしゃいますか?
カネコ先生:「理由なき反抗」でした。不良物というテーマでの2本だったのでしょう。
ーー粋な映画館ですね!先生の作品は他の日本のマンガと一線を画していますが、その理由は何でしょうか?
カネコ先生:実は、子供の頃は日本のマンガを読んでいましたが、ティーンに入って以降はほとんど読んでいないのです。映画やパンクロック、ローブローアート(*)を含めたイラストなどにはまっていて、それらからの影響がマンガという形に落とし込まれたからではないでしょうか。
*1970年代後半、アメリカ西海岸のロサンゼルスを中心に流行したアンダーグラウンド・ヴィジュアル・アート・ムーヴメント。
ーーなるほど!欧米などで先生の作品が高く評価される理由もそこら辺にありそうですね!別な質問になりますが、先ほど、タイの街についての印象をお伺いしましたが、直接的または間接的に今回の旅でのご経験が作品に投影される可能性はございますでしょうか?
カネコ先生:東京と比べて、人間らしさがむき出しになっている感じを強く受けました。バンコクの小さい裏路地を歩いて写真を撮ったりしていたんですが、壊れた車が放置されていたり、洗濯物が干されていたり、ワクワクする光景でしたね。はい、作品への影響はあると思います。
ーー実現を楽しみにしております!ありがとうございました!
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カネコアツシ先生~「Wet Moon」「Deathco」「Soil」「バンビ」などエッジの効いたジャンルを超えた作品で知られるカネコ先生の作品。フランスBD(バンドデシネ)批評家協会賞2014アジア部門賞やフランスサンマロ文学祭マンガ部門賞受賞を獲得するなど欧米を中心に世界中にファンを持っています。
追記:画風、物語、時間感覚、そして常に寄り添う不安と焦燥感などすべてにおいてユニークなカネコ先生の作品。そのルーツが日本のマンガより映画やパンクロックなど他のアートフォームにあると教えていただき、「なるほど!」と腑に落ちました。
映画好きでいらっしゃることから、「月世界旅行」からフィルムノワールまで多くのクラシック映画がカネコ先生の作品世界に投影されていますが、そこから、過去の映画へのオマージュをやはり自らの形で続けるティム・バートンを私は連想しました。彼の「エドワード・シザーハンズ」の城はデスこの住む城と山を隔てた場所にあり、同じ作品に登場する作り物めいたカラフルな町はそいるニュータウンと隣合っている・・・という妄想が浮かびます。
[取材 梅本昌男]
[日程]
展示: 2024年10月1日~13日 – BACC 5階カーブウォール
コンベンション: 2024年10月12日(土)~13日(日) – BACC 5階ホールおよび会議室501
[場所]
バンコク芸術文化センター (BACC)
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