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福岡とアジアのあいだで育まれてきた映画資産を活用し、新たな交流や協働を創り出すアジア映画の上映・交流プロジェクト「Aian Film Joint 2024」が、2024年11月7日(木)〜17日(日)に開催決定。第3回目となる今回のテーマは「とるにたらない」で、タイなどアジアの新旧映画を19本上映します。会場は福岡市総合図書館 映像ホール・シネラほか。
『Asian Film Joint 2024 とるにたらない』
会期:2024年11月7日(木)ー17日(日)
※10/27(日)、11/2(土)にプレイベント、11/11(月)、12(火)に関連イベント
会場:福岡市総合図書館 映像ホール・シネラ(福岡市早良区百道浜3-7-1)
観覧料:1,300円 ※一部上映を除く
主催:三声舎
協力:福岡市総合図書館、福岡フィルムコミッション
助成:(公財)福岡市文化芸術振興財団「FFACステップアップ助成プログラム」、(公財)野村財団
後援:福岡市、(公財)福岡市文化芸術振興財団
Asian Film Joint は、福岡とアジアのあいだで育まれてきた映画資産を活用し、新たな交流や協働を創り出すアジア映画の上映・交流プロジェクト。2021年より活動を開始。
これまで福岡の街が「アジアフォーカス・福岡国際映画祭(1991~2020年で終了)」や「福岡市フィルムアーカイヴ(1996年〜)」など30年以上の活動を通じてアジアと育んできた多様な映画資産(アジア各国の映画人とのネットワーク、福岡市総合図書館フィルムアーカイヴ収蔵のアジア名作フィルム群やその活動など)を今後も活用し、このまちとアジアが積み上げてきた映画・文化の歴史に新たな場面を加え、未来へ繋げることを目的とする。
Asian Film Joint 2024 とるにたらない(11/7木ー11/17日)
東南アジアと日本を中心としたアジア映画の新・旧作で構成する、全14作品のメインプログラム。2024年Asian Film Jointのテーマ「とるにたらない」のもと、日本初上映3本、九州初上映6本などに加え、福岡市フィルムアーカイヴの収蔵作品からも4本を上映。
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11/7木 18:00、11/15金 15:00
『オアシス・オブ・ナウ』 Oasis of Now 〈日本初上映〉
監督: チア・チー・サム
(2023/マレーシア、シンガポール、フランス/90分/日本語・英語字幕付き)
クアラルンプールの古い集合住宅の一角。その階段の吹抜けは母娘の密会場所だった。二人はここでゲームをしたり氷菓子を分け合ったりして、特別な時間を共にする。しかし二人は同じ団地で暮らしていながら、別々の場所へ戻らねばならない事情があった。ハンは色んな家を巡っては家事を続け、娘は母と少しでも共にいられる時間を切望する。
11/9土 11:00、11/13水 18:00
『目は開けたままで』 Sleep With Your Eyes Open 〈日本初上映〉
監督: ネレ・ウォーラッツ
(2024/ブラジル、アルゼンチン、台湾、ドイツ/97分/日本語・英語字幕付き)
カイは傷心旅行で台湾からブラジルの沿岸都市へ降り立つ。彼女は立ち寄った傘屋でアジア系移民の店主フアンと出会い、彼が残した大量の絵葉書を譲り受ける。絵葉書の裏には、かつて彼が一緒に働いていた中国人女性シャオシンによる日記が綴られていた。やがて姿を消してしまったフアンを探しながら、カイは日記のなかの彼らの物語に自分自身を重ね始める。
11/7木 15:00、11/17日 11:00
『真昼の不思議な物体』 Mysterious Object at Noon 〈九州初上映〉
監督:アピチャッポン・ウィーラセタクン
(2000/タイ/83分/日本語・英語字幕付き) ※35mmフィルム上映
映画監督がある女性へのインタビュー撮影を終えた後にこう告げる—「何か他の話はありませんか?本当のことでも、作り話でも良いので」。女は戸惑いながらもその場で創作した少年と女性教師の物語を語り出す。その後、撮影隊はタイの国中を旅しながら各地の人々によって〈物語の続き〉が紡がれ・変容していくさまをカメラに収めていく。 (作品提供:山形国際ドキュメンタリー映画祭)
11/8金 15:00、11/16土 11:00
『樹上の家』 The Tree house 〈アーカイヴ収蔵作品〉
監督:チューン・ミン・クイ
(2019/ベトナム・シンガポール、独、仏、中/84分/日本語・英語字幕付き)
2045年の火星に住む男が、かつて自身がベトナムの山岳地帯で撮影した少数民族の映像と自らの記憶を組み合わせた映画を制作している。しかし男は、彼らの映像やベトナム戦争当時の記録映像などを見進めていくうちに、自問を始める。自分には彼らを撮影する権利が本当にあったのか。そして自分はこの映画を完成させるべきなのか。
*鑑賞料金:500円ほか
【監督特集1:ダニエル・フイ (シンガポール) 】
11/10日 11:00、11/14木 18:00
『蛇の皮』 Snakeskin 〈九州初上映〉
監督:ダニエル・フイ
(2014/シンガポール/105分/日本語・英語字幕付き)
2066年、ある男が手渡された2014年のシンガポールのフィルム。そこには様々な人物たちが語る思い出や回想が記録されていた。映画はそれらと並行してシンガポール国家の建国神話を年代順に展開する。多声で語られる個人の記憶と、シンガポールの建国とルーツにまつわる〈歴史〉が交錯し、この地における抑圧と抵抗の残像があぶり出される。 (作品提供:山形国際ドキュメンタリー映画祭)
11/10日 14:00
『デモンズ』 Demons 〈アーカイヴ収蔵作品〉
監督:ダニエル・フイ
(2018/シンガポール/84分/日本語・英語字幕付き)
女優志望のヴィッキーは、尊敬する演出家のダニエルの新作舞台で大役を射止めるが、それは終わりのない搾取と抑圧の始まりだった。女優による芸術的苦悩をシンガポールという国が経験してきたトラウマと重ね神話的に描き出すことで、あらゆるコミュニティに潜む権力の暴力性を暴く。監督が個人とシンガポール国家の関係を見つめる「ヴィッキー三部作」の二作目。 (協力:福岡市総合図書館)
11/10日 16:30、11/14木 15:00
『スモール・アワーズ・オブ・ザ・ナイト』 Small Hours of the Night 〈日本初上映〉
監督:ダニエル・フイ
(2024/シンガポール/103分/日本語・英語字幕付き)
1960年代後半のシンガポール。独立を果たし、国として新たなアイデンティティを模索していたこの国の片隅で、ある暗い部屋に囚われた女性のヴィッキーが男に尋問されている。彼女自身の個人的なトラウマやこの国が経験した様々な記憶と対峙する長い一夜を経て、やがて彼女のアイデンティティは曖昧になっていく。
【監督特集2:ファム・ティエン・アン (ベトナム) 】
11/16土 14:00
『静黙』 The Mute 〈アーカイヴ収蔵作品〉
監督:ファム・ティエン・アン
(2018/ベトナム/15分/日本語・英語字幕付き)
止む気配のない強い雨の夜。親が決めた結婚を明日に控えた女性は、同性の恋人に会いに家を抜け出す。彼女は口がきけない。しかし彼女が押し黙る理由はそれだけなのか。じわじわと締め付けてくる社会通念と、神がもたらす愛とのあいだにある矛盾を、映画は静かに描き出していく。
『常に備えよ』 Stay Awake, Be Ready 〈アーカイヴ収蔵作品〉
監督:ファム・ティエン・アン
(2019/ベトナム/14分/日本語・英語字幕付き)
蒸し暑い一日の終わり。賑やかな街角の屋台で三人の男たちがとりとめのない会話を繰り広げていると、すぐ近くで突然バイク事故が起きる。炎をあげて調理を進める料理人、大道芸人の少年、ビールを売り込んでくる若い女性、群がる野次馬など、多様な人々をカメラは全編ワンショットで捉える。
*鑑賞料金:500円ほか
11/16土 16:30
『黄色い繭の殻の中』 Inside the Yellow Cocoon Shell 〈九州初上映〉
監督:ファム・ティエン・アン
(2023/ベトナム、シンガポール、フランス、スペイン/178分/日本語・英語字幕付き)
交通事故で突然亡くなった兄嫁の遺体を、失踪した兄に代わって故郷に送り届けることになったティエン。事故で奇跡的に助かった幼い甥を連れて帰郷した彼は、かつての恋人との再会を果たし、兄の消息を辿る旅を続ける。やがてそれは彼自身の魂の在処を探す旅へと変質していくのだった。カンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)受賞作品。 (字幕協力:東京フィルメックス、映像産業振興機構)
11/9土 14:30、11/15金 18:00
『石がある』 There Is a Stone 〈九州初上映〉
監督:太田達成
(2022/日本/104分/英語字幕付き)
旅行会社の仕事で郊外の町を訪れた女は、川辺で水切りをしている男と出会う。女は男との距離を慎重に測っていたが、いつしか二人は上流へ向かって一緒に歩きだしていた。〈あそび〉のはじまりと終わり。何かが途切れ、何かは残る。意味や目的から軽やかに抜け出し、ただそこに在るものを見留める無為の時間に充ちる特別な感覚が、映画に結晶している。
11/9土 17:30、11/17日 14:30
『これが星の歩きかた』 This Is How We Walk on the Planet 〈九州初上映〉
監督:清原惟
(2020/日本/26分/英語字幕付き)
2020年のとある日、太陽フレアの影響によってスマホなどの携帯電話回線に電波障害が発生。その影響で早めに閉店したデパートに取り残されてしまった木下花は、かつての同級生である渉と偶然の再会を果たす。閉ざされたデパートで過ごすことになった二人に訪れる、小さくも特別な一晩の物語。
『すべての夜を思いだす』 Remembering Every Night 〈福岡初上映〉監
督:清原惟
(2022/日本/116分/英語字幕付き)
多摩ニュータウンに住む三人の女性たちの、ありふれた、けれども特別な一日を描く。友人からの引越しハガキを頼りにニュータウンを歩き回る知珠。早朝から行方不明になった老人を捜すガス検針員の早苗。亡き友人が撮った写真の引換券を持ってその母へ会いに行く大学生の夏。それぞれが街に積もり重なる記憶に触れ、そこにいない誰かへの思いを巡らせる。
11/8金 18:00、11/13水 15:00
『広島を上演する』 Performing Hiroshima 〈九州初上映〉
監督:三間旭浩、山田咲、草野なつか、遠藤幹大 企画:マレビトの会
(2023/日本/133分/英語字幕付き)
演劇カンパニー「マレビトの会」が長崎、福島の舞台シリーズに続き、広島を題材に4名の監督と制作したオムニバス映画。広島で暮らす女性が友人と川のほとりで詩を共作する『しるしのない窓へ(三間旭浩)』、原爆の爆心地のすぐそばで胎内被ばくした女性が語る『ヒロエさんと広島を上演する(山田咲)』、大切な存在を失った女性が喪失と向き合いながら日常生活を送る『夢の涯てまで(草野なつか)』、広島にまつわる演劇のリハーサルと、難聴の音響スタッフが野外で音を採取する姿を追う『それがどこであっても(遠藤幹大)』の4作で構成。
ユネスコが制定する「世界視聴覚遺産の日(10/27)」を記念して、福岡市総合図書館フィルムアーカイヴとAsian Film Jointが共同で企画した特別プログラムを上映&上演します。
10/27日 11:00
『悪は存在しない』 Evil Does Not Exist
(2023/日本/106分)
監督:濱口竜介
長野県の自然豊かな高原に位置する町で慎ましい生活を送る父と娘。ある日、彼らの暮らす土地の近くに、コロナ禍のあおりを受けた芸能事務所がグランピング場を建設する計画が持ち上がる。そのずさんな計画に町内は動揺し、その余波はふたりの生活にも及んでいく。2023年ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞受賞作品。
*鑑賞料金:1,000円
10/27日 14:00
『GIFT』 Gift 〈九州初上演〉
(2023/日本/74分)
監督:濱口竜介 生演奏:石橋英子
『ドライブ・マイ・カー(2021)』でもタッグを組んだ音楽家・石橋英子と映画監督・濱口竜介のコラボレーションによって生まれた映像作品。濱口監督の『悪は存在しない』の映像素材に石橋の即興ライブ演奏が加えられることで、音楽と映像と物語のあいだの主従関係は消失し、演奏の度に「一回きり」の映像・音楽体験が立ち現れる。終了後に石橋英子さんによるアフタートークを予定。
*鑑賞料金:4,000円 (事前予約は10/1よりAsian Film Jointホームページにて案内予定)
Asian Film Joint 2021で特集したタイの女性監督アノーチャ・スウィチャーゴーンポン。この度、福岡市フィルムアーカイヴに監督の2006年の短編作品『グレイスランド』が収蔵されることとなりました。これを記念して『グレイスランド』ならびにアーカイヴ収蔵作品から監督の代表作を特集上映します。上映後にはAsian Film Joint主宰・三好剛平による2024年プログラムの解説トークも。
*鑑賞料金500円ほか(各プログラム)
11/2土 11:00
『暗くなるまでには』 By the Time It Gets Dark 〈アーカイヴ収蔵作品〉
(2016年/タイ・フランス・カタール・オランダ/105分/日本語字幕付き)
監督:アノーチャ・スウィチャーゴーンポン
1976年タイのタンマサート大学で、左派学生と市民活動家らの集会に警察が乗り込み、百人以上もの死者を出した「血の水曜日虐殺事件」が起こる。映画は一人の映画監督が、この集会に参加していた元活動家の女性作家へインタビューする場面から始まる。並行して有名俳優や飲食店の女性店員らの人生も語られ、徐々にタイの現在が浮かび上がってくる。
11/2土 14:00
『ありふれた話』 Mundane History 〈アーカイヴ収蔵作品〉
(2009年/タイ/82分/日本語字幕付き)※35mmフィルム上映
監督:アノーチャ・スウィチャーゴーンポン
事故によって下半身付随となった青年エークの介護のために、看護師のパンが雇われる。権威主義的な家長である父親と微妙な関係にあり常に不機嫌なエークだったが、献身的に介護を続けるパンへ徐々に心を開いてゆく。象徴的な家を舞台にした〈ありふれた日常〉の物語は現代タイ社会の寓話であり、やがて宇宙と生命の神秘的イメージへと接続していく。
『グレイスランド』 Graceland 〈アーカイヴ収蔵作品〉
006年/タイ/17分/日本語字幕付き) ※35mmフィルム上映
アノーチャ・スウィチャーゴーンポン
エルヴィス・プレスリーの扮装をした若い男と、いわくありげな年上女性。バンコクの夜の街で出会った二人は、互いの名前も行く先も分からぬまま都会から遠く離れた郊外へと向かう。カンヌ国際映画祭にタイの短編映画として初めて公式出品され、監督のその後の活動を推し進めた記念碑的な一作。このたび、福岡市フィルムアーカイヴに収蔵された。
11/2土 15:45
Asian Film Joint 2024 プログラム解説トーク *参加無料
ゲスト:三好剛平(Asian Film Joint 主宰)
聞き手:杉原永純(福岡市総合図書館フィルム・アーカイヴ 学芸員)
会期:11月11日(月)・12日(火) 開場18:30/開演19:00
会場:あじびホール(福岡市博多区下川端町3−1 8階)
入場料:1,000円
協賛:株式会社明治産業
映画を通じて「とるにたらない」営みを見つめ・考えることは、同時に観客による映画の鑑賞能力——すなわち画面のなかの「とるにたらない」運動を丁寧に見つめ、聞き取り、自ら思考することの問題でもある。観客自身の日常や世界への新たな視点を獲得する機会として、ゲスト講師とともに「映画の見方」のレッスンとなる批評講座を実施する。
11/11月19:00 「音で見る」 講師:樋口泰人(映画批評家・爆音映画祭プロデューサー)
11/12火19:00 「画面で見る」 講師:廣瀬 純(映画批評家)
樋口泰人(ひぐち・やすひと)
映画批評家。爆音映画祭プロデューサー。1957年生まれ。ビデオ、単行本、CDなどを製作・発売するレーベル「boid」を1998年に設立。2004年から東京・吉祥寺バウスシアターにて、音楽用のライヴ音響システムを使用しての爆音上映シリーズを企画。2008年より「爆音映画祭」を開始。批評集『映画は爆音でささやく』、『青山真治クロニクルズ』(いずれもboid)など刊行書籍も多数。プロデュースした吉祥寺バウスシアターの映画『BAUS』の公開が2025年春に控えている。
廣瀬純(ひろせ・じゅん)
映画批評家。龍谷大学教授。1971年生まれ。著書に『シネキャピタル』(洛北出版)、『シネマの大義 廣瀬純映画論集』(フィルムアート社)など。『新空位時代の政治哲学 クロニクル2015-2023』(共和国)ほか、政治思想関連の著作も多数。現在、月1回更新の POPEYE Web ポッドキャスト「PARAKEET CINEMA CLASS」が公開中。最新著書は8月刊行『監督のクセから読み解く名作映画図鑑』(彩図社)。
Asian Film Joint 2024についての詳細、続報は以下にて随時発表いたします。
お問い合わせは info@asianfilmjoint.com まで。
【Twitter】 https://twitter.com/asianfilmjoint2/
【Instagram】 https://www.instagram.com/asianfilmjoint/
【ホームページ】 http://asianfilmjoint.com/ ※ホームページは近日中に2024年版に更新予定
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