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タイ映画『ふたごのユーとミー 忘れられない夏』主演の2人にインタビュー~ティティヤー・ジラポーンシン&アントニー・ブィサレー

2024年6月15日 配信

タイ映画『ふたごのユーとミー 忘れられない夏』主演の2人にインタビュー!ティティヤー・ジラポーンシン&アントニー・ブィサレー

2024年6月28日(金)より日本で公開されるタイ映画『ふたごのユーとミー 忘れられない夏(英題:You & Me & Me)』。本国タイでは2023年に公開されたこの作品は、主演のティティヤー・ジラポーンシンが、ナチュラルに一卵性双生児の役を演じ切ったことで話題となり、タイ映画監督協会賞では新人女優賞を獲得。



しかも驚くなかれ、ティティヤー・ジラポーンシンは、この映画がデビュー作で、初めての演技と初めて尽くしにもかかわらず、この難役に挑戦したことになる。彼女を見つけたのは、2022年日本でも公開された『女神の継承』の監督を務めたバンジョン・ピサンタナクーン氏。『ふたごのユーとミー 忘れられない夏』では、自身の作品以外で初めてプロデューサーを担当することとなった彼が、知人のカメラマンが撮影した写真の中から、偶然ティティヤーを見つけ、主演に抜擢したという、シンデレラストーリもエピソードに含まれている。

監督を務めるのは、なんとこちらも一卵性双生児のワンウェーウ&ウェーウワン・ホンウィワット。これまでドキュメンタリー作品や配信ドラマの脚本・監督を手掛けてきたものの、映画監督はこれが初めて。一卵性双生児の監督が一卵性双生児の姉妹の話を描くという前代未聞のリアリティと、「初めて」尽くしの役者と製作陣が集結して生まれた作品だ。

製作・配給を手掛けたのは『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』ほか、世界的に注目される映画を製作し続けるGDH。

『ふたごのユーとミー 忘れられない夏』は、何でもシェアしていた仲良し一卵性双生児の姉妹、ユーとミーが、初恋を通して初めてシェアできないものに気付き、これまで感じたことがない思いに揺れる、甘酸っぱいストーリー。舞台はバンコクにBTSが開通した1999年。世界がY2K問題で大騒ぎし、ノストラダムスの大予言では世界が終わるとされていた年でもある。何かが変わるのではないか?と誰もが思い、恐れながらもワクワクしていた時代背景が、なおさら見ているものの心を揺さぶる。
また、父母の不仲から、母の故郷であるタイ東北部(イサーン地方)のナコンパノムで過ごすことになるユーとミーだが、雄大なメコン川が流れるナコンパノムの美しさ、ノスタルジックな雰囲気も、タイという国の魅力を存分に感じさせてくれる作品だ。

今回は『ふたごのユーとミー 忘れられない夏』の主演2人、ユーとミーの一卵性双生児姉妹を演じたティティヤー・ジラポーンシンと、ユーとミーの初恋の相手であり、優しいハーフのマーク役を演じたアントニー・ブィサレーにインタビュー。
2人とも日本公開を控え、ワクワク感を隠し切れないといった雰囲気だ。

タイ映画『ふたご二人のユーとミー 忘れられない夏』

 

初めての主演作が一人二役の双子役!スカウトされてからも大変だった

――あれ?映画で見る雰囲気と随分変わりましたね?大人になったような。

ティティヤー・ジラポーンシン(以下ティティヤー):撮影していたのはもう2年前ですからねー(笑)。

――ああ!そうですね。そりゃ成長しますよね(笑)。『ふたごのユーとミー 忘れられない夏』はタイでは2023年に公開されていますけど、公開後に家族や友達からはどんな反応がありましたか?

ティティヤー:私はこの映画に出演するまで、役者ではなかったので、演技をしたことがなかったんですよ。だから映画を見た友達はみんな驚いていましたね。でも、家族や友達には映画の撮影中、よくサポートしてもらったので、とても感謝しています。

――この映画でデビューするまでは、ごく普通の女の子だったと聞きました。

ティティヤー:ごく普通の高校生活を送っていて、学校ではタイダンスの専攻を取っていたんですよ。これがとても忙しくて(笑)。

――じゃあスカウトされた時にはさぞや驚かれたでしょうね?

ティティヤー:驚きましたよ(笑)!それにただの役ではなくて、まずは双子を演じなくちゃいけないっていうことで驚きました。初めての映画なので何もかも緊張していました。

ティティヤー・ジラポーンシン

ティティヤー・ジラポーンシン

 

自分と正反対の「マーク」であり続けるプロ根性

――アントニーさんの方はどうでした?

アントニー・ブィサレー(以下アントニー):僕が普段とキャラクターと全く違う人物を演じていたので、友達からはとにかくからかわれましたねー(笑)。でも、結果的にみんながほめてくれて、満足しています。

――いつもの自分と違う役を演じた、というと、役作りも大変だったのではないですか?

アントニー:そうですね。特にどこが一番大変だったということはないんですけど、とにかくずっと「マーク」という僕と真反対の田舎の少年になりきっていないといけないことが大変でした。

――タイの東北部イサーン地方の、ナコンパノムに住んでいる少年を演じたので、方言の特訓もあったそうですね?

アントニー:撮影の何日か前にナコンパノムに入りました。リアルな環境の中で発音を学んだりしたので、入り込みやすくはありましたが、とても難しかったですね。
実際にナコンパノムに住んでいる、イサーンの方言が話せるファラン(タイでは欧米人のことを「ファラン」と呼ぶ)の方がいて、そういう方に教えてもらったりしたんですけど、欧米人のイサーンの方言は、凄くかわいらしい印象になるんですよ。本当にそういう繊細な役柄の表現が、大変でした。

――映画のシーンの中でちょっと気になったんですけど、タイではハーフの方でも「ファラン」って言われるのですか?

アントニー:僕は高校生の時、インターナショナルスクールに通っていたので、欧米人やハーフはたくさんいたんですよ。だから言われることはほぼなかったんですけど、大学に進んでからは、「ファラン」ってからかわれたりすることはありました(笑)。

アントニー・ブィサレー

アントニー・ブィサレー

 

甘えん坊のユーとしっかり者のミー、演じるものとしてどう思った?

――ユーの苦手な科目の追試を入れ替わって受検してあげたり、ユーが「キン(タイの弦楽器)」を習うための授業料稼ぎに、おばあちゃんのお店でアルバイトしたりと、何かとユーをサポートしてきたたミーと、ちょっと甘えん坊でかわいいユー。
ティティヤーさんは顔は同じだけど、性格の異なる一卵性双生児を自然に演じていましたね。ティティヤーさんはユーとミー、どちらに感情移入しましたか?

ティティヤー:私の性格に近いのはミーの方だったんですよ。

――そうだったんですか!

ティティヤー:でも実際に演技をして行く中で、ユーの性格が自分の中にもあることに気付きました。だから、ユー役にもミー役にも全力で演技できたし、ユーもミーも大好き。

――ユーとミー、どちらと友達になりたいですか?

ティティヤー:うーん、私には双子の友達がいないので、ユーともミーとも友達になりたいなー。

――私はなんだか途中から、ミーが色々かわいそうに思えちゃって(笑)。

ティティヤー:(笑)…。たしかに時々そう思うんですけど、私はミーはしっかりしている分、ユーの方が気の弱い感じで、中盤はユーがとても傷付くシーンがあったり、結局どちらも同じくらい可哀そうだったり、楽しそうだったり、助け合ったりしていて、お互い様なのかなあって感じています。ミーは双子として先に生まれてきた方だから、ある程度お姉ちゃんとして我慢しなきゃいけない所もあるのかな?って思いました。

――2人の役を演じるのに混乱はしませんでした?例えば今日の撮影は、ユーを演じる日、この後の撮影はミーを演じる時間、と切り替えないといけなかったんじゃないかと思って。

ティティヤー:テクニック的に難しかったですねー(笑)。実はワークショップで双子を演じるための演技の勉強はできていたので、その場で対応することはできたんですけど、やっぱり現場には時間の制限があるじゃないですか?
例えば、現場で私がユーを演じるのか、ミーを演じるのか、みんな待っていてくれている訳なんですよ。だからその時間内にユーになり切ったり、ミーになり切ったりっていうのは大変だった思い出があります。

――ユーとミーがごっちゃになってしまうことはありませんでしたか?

ティティヤー:やっぱり凄く混乱しましたよ(笑)。私は今ユーなのか、ミーなのか?って混乱したり、「これはユーだよね」「これはミーだよね」って現場で何度も確認していましたね(笑)。

――アントニーさんがマークだったら、ユーとミーのどちらを好きになると思いますか?

アントニー:僕はミーの方が好きかな(笑)。ユーの方は家族として、妹として大切にしたいな、と思いますね。

 

ナコンパノムでの撮影の思い出

――ナコンパノムは映画にも出てきたけど、赤い蓮の池が映えると有名ですよね。メコン川沿いで、のどかな雰囲気が素敵な町でした。撮影では長期滞在したんですか?

アントニー:僕は方言を勉強するために撮影前からナコンパノムに入りました。

ティティヤー:私は撮影が始まってから入りましたけど、期間的に長くいたのは私で、半月くらい滞在しました。

アントニー:僕はだいたい1週間。

メコン川沿いのナコンパノム。川の向こうはラオス

――ナコンパノムの印象や思い出はありますか?

ティティヤー:ナコンパノムはとてもかわいい町で、親しみが持てます。メコン川もあって、自然も美しいですね。あとは、食事がとっても美味しいです。

アントニー:僕もご飯が凄く美味しいと思った(笑)!あとは、どこの場所が印象に残っていると言うよりも、とにかく毎日撮影したという思い出が占めていますね。
イサーンの言葉や、バイクの乗り方も身に付きましたけど、それよりも、映画を作るチームワークを知ることができました。

――アントニーさんはドラマには出演したことがあるんですよね?ドラマと映画は違いますか?

アントニー:僕は映画の撮影はこれが初めてでした。ドラマもチームワークはあるけれど、また映画とは違うようにも思いました。この映画を作るチームが、みんな僕らをサポートしてくれたことが一番の思い出ですね。映画ってこうやって力を合わせて作るんだなあと、学びました。

 

ノストラダムスの大予言を知らない世代

――物語の舞台は1999年って2人ともうまれていないじゃないですか。1999年、私は丁度バンコクでBTSが開業する時の花火の音を聞いて、ワクワクしていました。

ティティヤー:(笑)…生まれていません。

――ですよね(笑)。1999年をどんな時代だと思いましたか?どんなふうに、その時代について学んだんだろう?

ティティヤー:自分が生きていない時代っていうのもあるんですが、私が気になったのは「Y2K問題」ですね。父と母に「本当に地球がなくなっちゃうピンチだったの?」とか「Y2K問題」ってどんな問題だったの?って質問しました。

――もしかして「ノストラダムスの大予言」を全く知らないとか?当時は本気にしている人が多くて、大変な騒ぎになっていたんですよね。

ティティヤー:はい。最初は全く知らなかったので、聞いたり調べたりしました(笑)。

 

この映画は人生において、どんな存在になった?

――この映画は2人の人生において、どんな存在になりましたか?

ティティヤー:大きなチャレンジをさせてもらう機会になった大切な存在です。色々あるんですけど、一番大きかったのは、やっぱり初めての映画出演で、人生が全く変わってしまったことです。演技やせりふをおぼえたりというのも初めての経験だし、初めて映画に出演するのに双子を演じることになったりと、数えきれないほど色々な経験をさせていただきました。これからも、役者として生きていきたいな、と、思えた作品です。

――おお!人生のターニングポイントですね?

ティティヤー:はい。私がこの映画で初めてこの世界に足を踏み入れたように「この映画が初めて」という仕事の人が多かったことも印象に残っています。
例えば2人の監督は、この映画が初めての作品で、プロデューサーも初めての作品。
全てが初めての中で「絶対にいい作品を作ろうね!」と、みんなで決めて作品を作っていったんですよ。本当に素敵な思い出です。

アントニー:僕は最初、監督が2人いるということで、少し不安になったんですよ。

――そうなんですか?

アンㇳニー:だって、もし両方の監督が違うことを言ったら、どちらの言う事を聞けばいいかな?って判断に悩むことがあるかもしれないじゃないですか(笑)。でも、やっぱり双子の監督ということで、不思議ですけどそんなことはなかったですね。
とにかく、様々なことを学ばせていただいた映画です。

 

将来はどんな役者になりたい?

――将来はどんな役者になりたいですか?

ティティヤー:常に役者として自分を発展させていきたいですね。演じるごとに、レベルアップしていきたい。周囲の期待を、裏切らないような役者になりたいと思います。

アントニー:作品の監督が、僕を選んだことを後悔しないような役者になりたいですね。
やっぱり監督や脚本家、ディレクターさんって、僕らよりもっと大変だと思うんですよ。色々なことを頭の中に詰め込んで、作品を作り上げていかなきゃいけない人たちだから、そういう人たちと息を合わせて作品を作り上げていける役者になりたいです。

 

日本で映画を作るとしたら?

――2人は日本に旅行に来たことはありますか?

アントニー:タイ以外の国の中で、僕が一番好きなのは日本なんです(笑)!一番よく行ってる国も日本ですよ。

――おお!テンションが上がりましたね(笑)。ありがとうございます。これまで日本のどこに行きましたか?

アンㇳニー:よく行くのは東京と北海道。他にも沢山行ってるんだけど、行き過ぎて全部覚えていないくらい(笑)。和食が口に合うんですよね(笑)。

ティティヤー:実は私はまだ日本に行ったことがないんですけど、行きたいんです!和食が大好き!(笑)。

――日本で映画を作るとしたら、どんなシチュエーションで、どんな話を作ってみたいですか?

アントニー:君の名は。」みたいなストーリーの映画に出演してみたいなあ。

ティティヤー:私はドキュメンタリー。きれいなロケーションの中で、食べ歩いたり、各地方を旅しているようなものがいいなあ。

 

日本の皆さんへ

――この映画で初めて2人を知る日本人が多いと思います。

ティティヤー:そうですよね!

――日本の皆さんにメッセージをお願いします。

ティティヤー:この映画の日本公開が決まったことが、本当にうれしくて仕方がありません。実は日本で公開される映画に出演することは、自分の夢でもあったんですよ。
ぜひ映画を見てくださいね!

アントニー:コンニチハ(日本語)!初めまして。映画を見ていただいて、僕のことを気に入ってくれたら、ぜひSNSをフォローしてください。これからも応援してくださいね!アリガトー(日本語)

ティティヤー:https://www.instagram.com/bbaiporuary/
アントニー:https://www.instagram.com/anthonybuisseret/

――ありがとうございました!

 

取材を終えて

映画の中では黒髪、おかっぱの中学生を演じたティティヤー・ジラポーンシン。撮影時から2年たっていたこともあり、大人の雰囲気を身につけつつも、生き生き語る様子はユーとミーの面影を漂わせていた。
片やアントニー・ブィサレーは、素朴で優しいマークとはまた異なる、クールな雰囲気を持つ青年だ。本人も話していた通り、マークとは正反対の魅力を持つ人間なのだろう。
二人とも、この作品の後に、また新たな映画で共演を果たしており、そして更なる高みへと登って行こうとしている。
『ふたごのユーとミー 忘れられない夏』のままの2人でいてほしい、と、思う気持ち半分、2人の今後の作品をもっと見たい気持ち半分で取材を終えた。
10代から20代、人生の中で、一番輝きのある時間を生きている彼らが眩しくもあり、今後を期待せずにはいられない。

魅力あるキャスト陣はもちろん、映画のロケーションや背景はタイが好きな人にとってはたまらないはず。
1999年12月5日にBTSがバンコクに開通した日、打ちあがる花火に歓喜の表情を浮かべるバンコクの人々の顔を見ていた筆者は、やはりあの日、あの時のタイに引き戻されてしまった。
それに、ひと昔前、タイ旅行をした時にすれちがったおかっぱ黒髪の女子中高生、おわんみたいなカットの男子中高生が懐かしくなる。
その頃のタイを知る人は、25年前のタイの田舎の光景やファッション、音楽を楽しみながら、どっぷりとタイに浸ってほしい。また、その時を知らない皆さんも、そんな時代のタイに思いを馳せてみては?

取材・文:吉田彩緒莉(Saori Yoshida/Interview・text)
Photo : 大西弘司 (JK Creation) / ReallyLikeFilms
通訳 : Peronyasu

 

ふたごのユーとミー 忘れられない夏

YOU & ME & ME เธอกับฉันกับฉัน

中学生のユーとミー。ふたりは一卵性双生児の姉妹。生まれた時からずっと、どんなことでも一緒。隠し事ひとつなく、なんでもシェアしてきた。食べ放題のレストランだって、話題の恋愛映画だって、一人分の料金で二人分楽しんじゃう。ユーが苦手な数学の追試も、得意なミーが代わりに受けても誰も気づかない。ふたりに違いがあるとすれば、ミーの頬に小さなほくろがあることくらい。そんな絶対的信頼関係のふたりに、いつもとは何かが違う時間が流れはじめる。ハーフで色白、肩幅が広くて笑うと八重歯がのぞく素敵な男の子、同級生のマークが彼女たちの前に現れたからだ。1999年、世の中はY2K問題で世界が終わると大騒ぎしていた年。シェアすることのできない“初恋”という感情に揺れるユーとミー。二人の忘れられない夏が、まもなく終わりを告げようとしていた…。

[出演]
ティティヤー・ジラポーンシン(ユー/ミー) アントニー・ブィサレー(マーク)
[監督]
ワンウェーウ & ウェーウワン・ホンウィワット姉妹
[プロデュース]
 バンジョン・ピサンタナクーン (『女神の継承』監督)

[ เธอกับฉันกับฉัน | 2023年 | タイ映画 | タイ語 | 122分 | 1.85:1 | 5.1ch | DCP & Blu-ray ]

配給 :リアリーライクフィルムズ 
後援 :タイ国政府観光庁 

2024年6月28日(金)より、新宿ピカデリー、池袋HUMAXシネマズ、大阪ステーションシティシネマズ、名古屋ミッドランドスクエアシネマ他にて全国公開

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