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タイの南部にあるソンクラー県のサミラービーチ。ここに黄金の人魚像「ゴールデン・マーメイド」があります。
先日、サメット島の「巨人女性像」と「アパイマニー王子と人魚の像」をご紹介しました。ソンクラー県サミラービーチの人魚像も同じように、“タイの詩聖”と呼ばれるスントーン・プーによる長編叙事詩「アパイマニー王子物語」に登場する人魚がモチーフになっています。
昔、昔のこと。ある星が美しく輝く夜。若い漁師が浜辺を歩いていると、その先の岩の上に人影を見つけました。星明りで照らされる相手をよく見ると、それは長い髪を黄金の櫛でとかしている人魚でした。
その美しい横顔に漁師は見惚れていました。しかし、人魚はこちらを向いて、漁師がいるのを知ると、慌てて海へ飛び込んでしまいました。
「待ってくれ、僕は危害など加えないよ!」と漁師は叫びましたが、人魚はそのまま海へと潜って行ってしまいました。
漁師は岩の上に人魚が櫛を置いていったのを見つけました。
「いつか人魚はこれを取りに戻ってくるだろう」と漁師は思いました。
そして、毎晩、若い漁師は浜辺で人魚が戻るのを待っていましたが、決して再び現れることはありませんでした・・・
黄金の人魚像を作ったのはタイ現代アートの巨匠の一人であるプラキット(ジット)ブアブット(1911~2010年)で、1966年に建立されました。2018年のテロで一部損壊しましたが、後で完全に修復され、今も多くの観光客をサミラービーチへ呼んでいます。
ところで、『アパイマニー王子物語』ですが、海外では古代ギリシャの『オデュッセイア』(ホメ‐ロス作)と比較されることがよくあります。どちらも長編叙事詩という点、主人公が怪物や化け物と戦い苦難の旅を続けるという点が同じだからです。
実は、この『オデュッセイア』にも人魚のルーツと言われるセイレーンという怪物が出てきます。上半身が女性で下半身が鳥という姿をしていて、その歌声で船乗りたちを誘惑しては食い殺していました。英語で警報を意味する“サイレン”はこのセイレーンが語源となっています。
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