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国立大学法人千葉大学の環境ISO学生委員会は、2023年2月26日(日)から3月12日(日)まで、タイ・チェンマイ大学にて同委員会初となる海外留学プログラムを実施し、10名の学生が渡航して、チェンマイ大学が進めるSDGsに関わる優れた取り組みなどを講義とフィールドワークを通じて学びました。
名称:2023年春 環境ISO学生委員会×「Global+」留学プログラム ~タイ北部のチェンマイ大学でSDGsと持続可能性について学ぶ~
概要:千葉大学の協定校であるタイのチェンマイ大学に行き、SDGsやタイの環境問題に関する講義への参加、SDGsに関連する施設の見学、現地の学生や教職員との交流を行うほか、国立公園へのフィールドワークやタイの文化にも触れる、授業科目「Global+」と連携した充実の2週間プログラム。千葉大学ではグローバル人材育成の観点から全学をあげて海外留学を推進していますが、本留学プログラムはその一環として実施しました。
2020年2月に実施する計画がありましたが、新型コロナウイルスの影響で中止となり、3年越しに実施することができました。
日程:2023年2月26日(日)~3月12日(日)14日間
参加学生数:環境ISO学生委員会に所属する学部1~3年生の10名
※留学費用に関して、「千葉大学×京葉銀行ecoプロジェクト」における株式会社京葉銀行からの寄付金より、1人あたり10万円の支援をしました。
プログラムの内容は、チェンマイ大学語学研究所(Chiang Mai University Language Institute)が、関連部局と調整し取りまとめました。プログラムでは、語学研究所の担当者がコーディネートをしつつ、各テーマごとに関連部局の教職員が講義やフィールドトリップの運営に携わりました。
プログラムの日程は以下の通りです。
1964年にタイでバンコク以外の場所に初めて設置された国立総合研究大学で、タイ北部の国際観光都市チェンマイの旧市街西側に、千葉大学西千葉キャンパスの6.6倍もある広大なメインキャンパスを有し、学生数は約2万5千人で20の学部や研究機関があります。タイムズの世界大学ランキングでは千葉大学とほぼ同順位で、また、SDGsの取組状況をもとに作られるインパクトランキングでは、2022年度は世界第70位と、SDGsに関わる教育研究活動が世界的にとても充実している大学の一つです。
環境ISO学生委員会紹介
10名の学生が分担して委員会の具体的な活動について英語でプレゼンテーションをし、その後チェンマイ大学の学生と意見交換をしました。コロナ禍で全員揃っての事前準備が難しい中、日本の事情を知らないタイの学生にもわかりやすく伝えられるよう工夫をしました。
北部タイの少数民族、持続可能な農業
北部タイに暮らす少数民族の状況について講義を受けるとともに、大気汚染を引き起こす要因の一つと言われる山焼きの習慣と持続可能な農業のあり方について、賛成と反対の2グループに分かれてそれぞれの立場から学生間でディスカッションを行い発表しました。
持続可能な農業の具体的な取組
チェンマイ郊外のプラーオ地区にある農園(果樹園)に出向き、堆肥の作り方を学んだり、果樹栽培に適切な土壌のあり方などを検査キットを使って化学的に検証したほか、視察を通じて熱帯の果物の栽培風景も知ることで持続可能な農業の具体的な取り組みを体験しました。
チェンマイ大学環境科学研究センター
研究センター内では、学生が使用しているマスクがPM2.5などの微粒子をどれくらい防ぐことができるのか専用の機器を使って数値を測定し、マスクの予防効果について理解しました。また、別キャンパスにある屋外の研究施設に出向き、様々な観測機器を通じた大気汚染の測定手法などを実地で学びました。
エレファントキャンプ
ファンイベントとしての象との触れ合いのみならず、象の個体数維持など自然保護の観点や、林業に代わる産業としての観光業の振興などエレファントキャンプへの期待を理解しました。
水資源保護と運河再生
地形図をもとにチェンマイにおける地形や治水の歴史を学ぶとともに、チェンマイ大学内の貯水池の役割を起点に、水源だけでなく古くからチェンマイの人々の癒しの場となっているファイ・ケーオ滝、チェンマイ市内や郊外にある運河に出向き、その役割や問題点などを実地から理解しました。さらに、ゴミの投棄などで汚染された運河を浄化する活動を続けている高校へ訪問したり、運河のみならず運河沿いのエリアの衛生環境を改善して新たな観光地として再生させた取り組みを関係者の声も交えて学んだりしました。
チェンマイ大学エネルギー開発研究機構
別キャンパスにある研究・展示施設に出向き、チェンマイ大学での再生エネルギーに関する取組について講義や展示施設にある模型やパネルなどを使って説明を受けるとともに、電気自動車用のチャージャースタンドやバイオマス発電施設なども見学しました。
チェンマイのコーヒー文化と少数民族の貢献
チェンマイ郊外の大きなロースターを併設したファクトリーに出向き、北部タイに住む少数民族アカ族発の有機栽培によるコーヒー「アカアマコーヒー」誕生の物語と、現在のビジネス展開について講義を受けた後、施設を見学し最後に美味しいコーヒーを味わいました。
ドイ・インタノン国立公園
タイ最高峰(2565m)のドイ・インタノン山頂付近は、熱帯にもかかわらず日中の気温が10度台ととても過ごしやすい気候帯です。ここでは温帯の植物が多く見られることから、熱帯の植物との違いを学ぶ良い機会となりました。
チェンマイ大学学生との交流
プログラム中、5名のチェンマイ大学の学生が千葉大生をサポートしました。フィールドトリップにも随行してくれたり、夜は一緒に食事へ行くなどタイ流の学生生活を楽しみました。交流を通じてタイの若者の環境に対する意識も学ぶことができました。3月1日にはチェンマイ大学日本語学科主催の日本祭がキャンパス内で開催され、大勢のチェンマイ大学の学生が参加しており、タイの学生の日本への関心の高さを知ることができました。
大城友理(国際教養学部・3年)
チェンマイでの2週間は、常に多角的な観点からSDGsを学び、考え、意見交換を行い、非常に刺激的でした。街中では大気汚染や水質汚染の現状を体感し、一方で学校や地域コミュニティが一丸となって改善していこうとする動きも知ることができました。環境問題や貧困問題の繋がりを感じたと共に、それらを自分ごととして捉え、地球全体で知識を共有しあい、対策することが重要だと考えました。今後も、留学で学んだことを活かして世界へとコミュニティの輪を広げ、持続可能な社会の実現に向けて一層アンテナを張り、行動していきたいです。
鈴木ほの香(理学部・2年)
チェンマイ大学のインパクトランキングの数値を予習してから現地に行きましたが、実際のSDGsの取り組みを見ることで学びが深まりました。また、食・言語・風土といった文化的な側面に触れたことも、日本では経験できない貴重な経験になりました。私はアジアの他国に対して、今まで漠然としたイメージしかありませんでしたが、今回の留学を通してその国々との距離感が近くなり、良い刺激になりました。この留学で吸収したことは、環境ISO学生委員会の活動に留まらず、残りの学生生活などで活かしていきたいです。
平川菜苗(教育学部・2年)
チェンマイで過ごした日々は私にとって一生忘れることのできない2週間となりました。環境問題の中でもフードロスについて特に関心があったのですが、チェンマイ大学の学内に生ゴミから発電が出来るシステムがあることにとても驚きました。今回のプログラムでは、大気汚染の現状を身をもって体感したことに加え、現地の学生と出会うことができ、優しさや勤勉さに大きな刺激を受けることができました。これらはオンラインではなく、渡航プログラムだったからこそ得られたことであると思いました。
日下部朱音(文学部・2年)
本プログラムでは、SDGsについて深く学ぶと同時に、タイの環境や文化について肌で感じることができました。特に印象的だったのは大気汚染の問題です。今まで日本でもそれを耳にすることはありましたが、実感する機会はあまりありませんでした。しかし、タイでは日本以上に大気汚染問題が深刻で、特に今はPM2.5が酷くなる時期ということもあり、プログラム中も大気汚染のせいで空が曇って見えるほどでした。その光景を見て、問題への対策の必要性を痛感するとともに、自分が今までそれについてどこか他人事のように考えてしまっていたことにも気づき、反省の念を抱きました。これからは、プログラム中に感じたことを自分の行動につなげていきたいです。
望月佳穂(法政経学部・2年)
私は、このプログラムを通じてチェンマイの環境への取り組み、文化について学ぶことができました。タイは同じアジアでも日本とは環境、文化を異にするため、日本でその問題を学ぶには難しく感じることもありました。チェンマイでは大気汚染について高い問題意識を持っていて、汚染物質測定施設などを見学できました。実際に大気汚染について研究している方から詳しく講義を受けたり、大気汚染、その研究を自分の目で見ることにより理解が深まりました。そのほかにも多くの経験をすることができ、チェンマイでの2週間はとても新鮮で刺激的なものとなりました。この留学で得た経験をこれからに活かしていきたいと思います。
大島三和(国際教養学部・2年)
チェンマイで過ごした2週間は、私史上最も濃密で有意義でした。講義のみならず、目で見る景色、肌で感じる空気、心で受け取った人々の温かさなど私を取り巻く全ての環境から学びを得ました。以前から食品ロス問題に関心がありましたが、本留学を経て「食べ物」だけに着目するのではなく、水やエネルギー、社会変化、気候変動なども考慮しなければ課題解決にはならないということを実感しました。チェンマイ大学の学生は、地域の人々と協力し現地の河川を清掃するなどしていました。学生一人一人の力は小さかったとしても、集まれば大きな力になります。私も何か行動を起こそうと決意を新たにしました。多角的視点で考え、自ら行動することの大切さを学びました。
恒川恵豊(園芸学部・2年)
チェンマイでの2週間では日本では得ることの出来ない経験をすることができ自分の中の価値観が広がりました。特に印象に残ったのは大気汚染に関する講義です。日本でも九州などではPM2.5の濃度が高いです。タイでも同じくらいだと思っていましたが違いました。街一面の空を曇らせ、まるで濁った霧のようでした。大学の環境は日本国内でも大きく異なります。千葉の立地の良いところを活かして様々な活動に取り組んでいき、他の大学とも交流して多角的な視野を身に着けたいと思いました。
佐々木淳大(法政経学部・1年)
チェンマイでの2週間は、私にとってとても刺激的で、有意義なものとなりました。特に、少数民族の貧困を実際に経験している方からのお話を、直接聞くことができたことが印象的で、新たな視点や考え方を得ることができました。また、タイにおける大気汚染も実際に感じることもできました。この留学を通して、これらを含めた様々な問題が深く絡み合っていることが見えてきて、解決へ導くことの難しさを改めて実感するとともに、問題を体感したことで、より身近に考えることができるようになりました。自分には何ができるのかを、考え直し、行動に移していきたいです。
初めての実施となった海外留学プログラムは、チェンマイ大学の優れた取組事例を目の当たりにしたことで、参加した学生たちに改めてSDGsの目標達成の重要性について再認識する良い機会となりました。こうした海外留学プログラムの利点をさらに活かして、ほかの学生たちにも良い影響を与えられるよう、来年度以降も可能な限り海外留学プログラムの実施を進めていきたいと考えています。
千葉大学は、環境マネジメントシステム(EMS)の国際規格であるISO14001を2005年に取得して以来、地域社会に開かれた形でEMSを運用していくことを「環境・エネルギー方針」の柱の1つとして掲げて活動をしています。千葉大学ではEMSを学生主体で運用することを教育の一環としており、2003年に設立された「千葉大学環境ISO学生委員会」が中心となって、学内・地域社会でEMSや様々な環境活動を実施しています。
毎年1~3年生まで約300名が所属し、内部監査員や環境報告書の作成のほか、エネルギー班、紙班、ごみ班、堆肥化班、学外緑化班、構内美化班、学外教育班、環境報告書班、地域交流班など、活動の内容に応じて20ほどの班や担当があり、環境負荷削減の意識啓発活動や、小中学校幼稚園への環境教育活動、緑化や堆肥化といった活動、エコグッズの作成など、幅広い活動を行っています。
近年ではSDGsの達成を目指して、企業と連携したプロジェクトも複数実施しています。また、2009年にNPO法人格も取得し、NPO法人として企業と協力して里山保全活動を行ったり、地域の学校へ環境出前授業を行ったりしています。
◆公式サイト http://chiba-u-siso.xrea.jp/chibasiso/
千葉大学と京葉銀行は2012年に包括連携協定を結んでおり、千葉大学で環境活動を主体的に担っている環境ISO学生委員会と京葉銀行が協同で、2017年から「ecoプロジェクト~7色の虹を千葉から未来へ」を実施しています。本プロジェクトでは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて、まずは「地域の環境負荷削減と環境意識向上に貢献したい」という想いで、京葉銀行の行員や取引先企業、地域住民、千葉大学の学生などを含めた千葉県内の多くの方々を対象に、環境意識の啓発活動を実践しています。
公式サイト https://www.keiyobank.co.jp/ir/eco_project/
千葉大学環境ISO事務局
kankyo-iso@office.chiba-u.jp
Tel:043-290-3572
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