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2016年3月26日、タイ映画界の鬼才、アピチャッポン・ウィーラセタクン監督の5年ぶりの最新作『光りの墓』が東京・シアター・イメージフォーラムで公開初日を迎え、初日イベントとして、タイに滞在中のアピチャッポン・ウィーラセタクン監督とスカイプでQ&Aを行いました。
『光りの墓』プロモーションとして来日を予定していたアピチャッポン・ウィーラセタクン監督だったが、映画作家としても美術作家としても2016年は多忙なスケジュールとなり、やむなく来日を断念。その代わりに、公開初日の3/26に、skypeによる観客とのQ&Aを実施しました。スクリーンにアピチャッポン監督の顔が大写しになり、スタート。この日、監督はすでに8年間ほど暮らしているというタイ・チェンマイの自宅からのQ&Aとなりました。(■は観客による発言です。)
■「眠り病」を映画の題材にしたきっかけは?
数 年前、村でアートプロジェクトをおこなっていました。タイ国内の政治的な状況などんどん酷くなっていると感じているなか、僕自身の眠りの時間が長くなって いったのです。それは逃避願望といえるかもしれません。眠りを通して、もうひとつの現実と向きあおうとしていたとも言えます。今も、夢の中に閉じ込められ ているという感覚が残っています。
■監督の作品はタイ国内では上映禁止になっているそうですが、自分の作品をタイの国内の人々や、自分の周りの人々に語っているのか、それとも世界の人々に対して語っているのでしょうか。その違いを意識していますか?
私 は今でも、個人的なものを作っていられることに、感謝していますし、驚いています。とても個人的な記憶、体験にもとづいて作っているので、それを海外でも 見てもらえ、自分の作品を通して海外の人とコミュニケーションが可能になるということ、また海外の人から、違うアングルでみてもらえることに感謝していま す。違いについてはよく分からないですが、結局のところ、自分のため、周囲の人のために作り続けているんだと思います。
■ アピチャッポン監督の映画は、これまでに3本(『世紀の光』、『ブンミおじさんの森』、『光りの墓』)を見ました。「映画ってこんなに自由でいいんだ!」 と感動して、今日もすごく気持ちの上ではエキサイティングして、各シーンをみたのですが、必ず気持よく眠ってしまいます。今日も寝てしまって悔しいです。 ところで、これらの作品を通して言いたいことは一つなのではないかという気がするのですが、どうなんでしょうか?
自 分としては、各作品ごと、沢山のことを言っているつもりです。ただ、ある意味で、世界のボーダーが揺らいでいく場面、線の周りを踊ろうとしているのを描く という点では一緒だと思います。私が作るのは、とてもパーソナルな映画なので、観客がそこにつながりを感じて、見続けてくれることに喜んでいます。
言 われてみれば、たしかに、「記憶」について描くという共通点はあるのかもしれないですね。『世紀の光』では両親の思い出を回顧していましたし、『ブンミお じさん~』では、前世の記憶というものを扱いました。本作『光りの墓』では、古い場所から新しい転換点をみつけようとしている映画と言えますね。
■病院の中に出てくるピンクや青のライトについて、私はピンクにはセクシーさと優しさを、その色や映像から感じました。監督が色に込めた思い、意味を教えてください。
眠っている際の脳についてリサーチした MITの 研究を参考にしています。あの場面は、色の効果によって兵士たちがあたらしい記憶を捏造されている、という意味もありつつ、実は観客に対して催眠術をかけ るという効果もあるようです。映画というのはポストプロダクションの段階で、色を調整するのですが、あの場面をみると、みなさんが「これは(作られた)映 画なんだ」と気付いてくれるでしょう。色を操作することによって、自然ではなく、人工的な体験をしてもらうという狙いがありました。
■最後に、観客の皆さんへのメッセージをお願いします。
僕 の作品をみて、感想をシェアし続けられることが嬉しい。もし皆さまの中に、作品をつくったり、文章を書いたり、といった表現をしている方がいたら、つくる ことをやり続けて欲しい。映画を作っている人には、パーソナルな映画を作り続けてほしいと思います。表現をし続けることで、自分以外の人の作品をみた時 に、よりコミュニケーションが深まるのだと思います。
รักที่ขอนแก่น (ラックティーコンケーン)
CEMETERY OF SPLENDOUR
舞台はタイ東北部。かつて学校だった病院。“眠り病”にかかった男たちがベッドで眠っている。病院を訪れた女性ジェンは、面会者のいない”眠り病”の 青年の世話を見はじめ、眠る男たちの魂と交信する特殊な力を持つ若い女性ケンと知り合う。そして、病院のある場所が、はるか昔に王様の墓だったと知り、眠 り病に関係があると気づく。青年はやがて目を覚ますが……
2015 年|タイ/イギリス/フランス/ドイツ/マレーシア|122 分|5.1 surround|DCP
© Kick the Machine Films/ Illuminations Films
[製作・脚本・監督]
アピチャッポン・ウィーラセタクン
[キャスト]
ジェン:ジェンジラー・ポンパット・ワイドナー
イット:バンロップ・ロームノーイ
ケン:ジャリンパッタラー・ルアンラム
[スタッフ]
撮影監督:ディエゴ・ガルシア
美術:エーカラット・ホームラオー
音響デザイン:アックリットチャルーム・カンラヤーナミット
編集:リー・チャータメーティークン
ライン・プロデューサー:スチャーダー・スワンナソーン
第1助監督:ソムポット・チットケーソーンポン
プロデューサー:キース・グリフィス、サイモン・フィールド、シャルル・ド・モー、ミヒャエル・ヴェーバー、ハンス・ガイセンデルファー
タイ語翻訳:福冨渉 日本語字幕:間渕康子
配給・宣伝:ムヴィオラ 宣伝協力:boid
http://www.moviola.jp/api2016/
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