2015年4月22日掲載
「ボールタッチが柔らかく、とてもサッカー初心者に見えなかった」大会を通じて出会った彼に、俺は何故か魅了された。スタメンでは無いのに…「サッカーをプレーするのが楽しくて仕方が無い」と感じられるような笑顔でのプレーに魅かれたのかも知れない。
そんな彼は中学生となり…しかし順調に成長の歩みを進めていた訳では無かった。俺の”ボールへ喰らい付くとこから始めろ、負けたくねぇという気持ちを常に持って戦え”というスタイルが合わなかったのかな…と思い、素直に彼に意見をぶつけてみることにした。「俺が思い描いている成長線の申し訳ないけどSOHは下を行っている。出会った頃のように、何でサッカーを楽しんでプレーしないんだ!?」。正直伝えた後、”ちょっと言い過ぎたかな”と感じたんだけどね。
サッカーノートは頻繁に提出してくれていて、彼とのやり取りは楽しかったんだけど…「○○君へのスルーパスが上手く通せたと思うけど、○○君はどう思ったかな」「今日は△△君に褒められた」なんて他人の目を凄く気にする彼にも正直疑問に思っていた。
言い過ぎたと思った発言をした夜、彼からLINEが送られてきた。”実は…”、彼は思い出したくも無かったであろう過去を正直に打ち明けてくれた。でもあえて同情せずに「自分の武器は何だ!? 誰にも負けないモノを練習や試合で、ピッチ上で見せつけてみろ。人の目なんて気にしてんじゃねぇよ。SOHがサッカーを楽しそうにプレーすることで後輩達はお前を凄く格好良いと感じているんだぞっ」と突き放した。数日後、彼から提出されたサッカーノートにはびっしりと気持ち書き記されていた。
「僕はとにかく誰よりも…チームで1番声を出すことから始めようと思います」と…元々技術が高い選手だったので、「兎に角周りの目を気にせず自信を持ってプレーしなさい。更にSOHが誰にも負けない声出しをすることでチームを引っ張って行って欲しい」と本人すら予想していなかったであろうチームキャプテンに任命した。
ここで俺はSOHに謝らなければいけない事がある。SOHは”中学3年生の夏に(日本へ)帰る”と思っていた俺は中学2年生の12月に行われた大会で、あえて主力組から外して「自分がチームの主役なんだ」という事を自覚して貰おうことを試みた。彼はこのメンバーで戦う最後の大会と解っていたのかも知れない。何度か「戻して貰えませんか!?」と尋ねて来ていたもんな。今でも自覚を持たせる意味で決断は間違っていなかったと思っているのだけれど、まさかこの時期に本帰国すると思っていなかったから…あのまま主力組と一緒に戦っていたら、優勝カップをSOHが頭上に掲げていたかも知れないね。
彼はもう日本でプレーを始めている。強豪チームに所属し一歩一歩歩み出しているようだ。「グランド上で苦しそうな顔をするな。誰よりも声を出し続け、サッカーを楽しそうにプレーすることが出来れば、自ずとチームメイトを引っ張ることになるしSOHに付いてくるだろう。」TERAKAWA SOHの”いちファン”として、俺は彼の日本での成長を応援し続けていこうと思う。
伊藤琢矢(いとたく)
アマチュアに拘りプレーを続けた20代。33歳でのプロ契約を期にJリーガーを目指す事に。大宮・岡山・北九州とJリーグ昇格に携わり、自身は36歳でJのピッチに立った。2011年よりタイに活躍の場を移した「夢追人」。
いとたくブログ『夢追人』
Regista in Thailand